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ち上がれるように手を差し出してくれた。「ありがとう。あの—— 」「ねえ!少游はどこから来たの?ここで何してるの?一人なの?それとも誰かと一緒?」こちらが紳士らしく振る舞おうとしているのに、塞西莉はこの調子でたたみかけてくる。どうにも調子が狂う。こっちだって聞きたいことがいつばいあるんだ。でも、猪みたいな勢いで質問してくる塞西莉にひるんで主導権を握られつばなしだった。
たとえばこんな調子だ。「ねえねえ、あなたって島の外から来たんてしょ?」「当たり前だろ」「すごーい !街って市場があって、人がいつばいいるんでしょ?」「まあね。その、いつぽいいるかも」そんなこと聞かれたって、こっちの住処は人里離れた山奥の、さらに地下の地下だ。そりゃ、活気があって人のいっぽいいる街には行ってみたいさ。でも、逢魔漏が連れてってくれるのはだいたい人里離れた場所だ。師匠になってくれるような達人は団子虫みたいに隠れるのが好きな人ばかり。武芸を極めるとどこか変になるんだろうか。
でも塞西莉はこっちの悩みなんてお構いなし。「ねえねえ、市場ってどんなお店があるの?」「えーと、色々.....その、屋台とか.....ご飯とか食べられるところとか.....」「色々って何?もっと詳しく教えて!」「色々は色々だよ!焼餠とか.....食べるだろ?」焼餅は街に必要なものを仕入れに行った渡衰聲がよく買ってきてくれるので知っていた。肉をはさんである焼餠はかぶりつくと生地にたつぶり染みた肉汁がロの中に広がって本当に美味い。保存食ばかりの生活ではごちそうと言ってもいい。
しどろもどろになり始めると塞西莉は疑わしそうな顔で問い詰めてくる。「.....ねえ、あなた本当に街の人?なんか怪しくない?」「しょうがないだろ! 街なんて滅多に行かないんだ!じいさんと洞窟に住んでるんだから」「なーんだ.....」最初から街の人間だなんて言ってないのに、露骨にがっかりされると腹が立つ。
勝手なことばかり言うのはあの父親に甘やかされてるからだろう。「でも、街なんて行かなくたって、この島だってそう悪いところしゃないだろ?無界閣なんて四六時中暗くてじめしめしてるんだぞ」きつぽり言ってやった。住めば都というやつだ。ところが「そりゃあなたの家よりはきっと私の家の方が上等に決まってるじゃない。あたりまえでしょ!」なんて言われたら、こっちだって頭に来る。でも、とりあえす猪の突進は止まった。
そんなこんなで答えられないことは誤魔化しつつ、なんとか聞き出した情報によると、彼女は父親と二人だけでこの砦みたいな家に暮らしているらしい。湖に浮かぶこの島はそれなりに広いようだけど、塞西莉たち以外には人が住んでいない。そ