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【采访】美雪畅聊《Contralto》的制作过程及心得

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转载自(表情防吞):www.1101.com/n/s/miyuki_nakajima
顺着官网找到的美雪在二月份接受的一访谈,机翻了一下发现信息量不少,把日文原文搬过来,方便懂日文的小伙伴们更好的理解《Contralto》这专,已经看过的大佬们就无视好了,或是帮忙做做注解。不懂日文的宝宝们机翻吧…… “歌うことが許されなければ”的解释挺让个人惊讶的,翻译结果显示了一个略沉重的创作动机,虽然大家注意力更多被“羊肉串”味儿的编曲所吸引了。
敲个小黑板,她在访谈里又亲口谈到了“银龙”代表的是手术刀这事,外人含糊就罢了,自己人别再混淆概念了哈



  • 岛爪
  • 本家
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「あの歌は、いったいどうやってつくっているんだろう?」
糸井重里は、中島みゆきさんについて、
かねがねそんなふうに言っていました。
「すごいよなぁ。話す機会があったら、訊いてみたいなぁ」って。
じっさいはなかなか腰を据えて会う機会がなく、
また、みゆきさんもメディアで多くを語らない。
そんななか、9年ぶりに実現したこの対談では、
ニューアルバム『CONTRALTO』を軸に、
いくつかの楽曲を解体するように、
「中島みゆき」という音楽家について探求していきます。
‥‥って、すっごくマジメな感じですけれど、
(もちろん、マジメなんですけれど、)
2時間15分におよんだこの対談中、
なんども、ふたりの笑い声がひびいていました。
そんな笑い声もまるごと、全10回で、おとどけします。
*この対談は、本とマンガの情報誌
『ダ・ヴィンチ』との共同企画。
「ほぼ日」と『ダ・ヴィンチ』、
ふたつの編集バージョンを、
それぞれ、掲載しています。
2020年2月6日発売の『ダ・ヴィンチ』3月号も、
どうぞ、あわせてお読みくださいね。
司会:藤井徹貫
写真(糸井重里):冨永智子
協力:稲子美砂(ダ・ヴィンチ)/横里隆(上ノ空)
(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス 出版許諾番号 20026 P
(許諾の対象は、弊社が許諾することのできる楽曲に限ります。)


2025-08-18 07:16:01
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  • 岛爪
  • 本家
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中島
お久しぶりですねぇ。
よろしくお願いします。
糸井
よろしくお願いしまーす。
9年ぶりなんだって。
中島
そんな、なりますか。
糸井
うん。楽屋でご挨拶はしてますけど。
コンサートのたび。
中島
そうなんですよ。だから、
そんな昔でもない気がする。
糸井
今ね、みゆきさんがいらっしゃる前に、
CDをパソコンに取り込もうとすると
ちがう曲名や名前が出ちゃうことについて話をしてて。
中島
そうなの?
糸井
例えば中島みゆきのCDを入れたら、
吉田拓郎が表示されちゃう、みたいな。
中島
はいはいはいはい。
あるらしいですね、それ。
糸井
中島みゆきのCDには、
「作品情報の表示に関するよくあるご質問」
という別紙が入っててさ、
それはCDの不良じゃないんですよと、
かなり詳しい但し書きが入ってるの。
で、これね、どのCDにも入ってるのかと思ったら、
中島みゆきのCDにしか入ってないらしいんだよ(笑)。
中島
あれま! あららら。
みんなやってることだと思ったら(笑)。
うちのスタッフが心配性ですからね。
糸井
いいことしたなぁと思って。
だって、聞く人が、
こういうものに慣れてない人だったら、
困っちゃうもの。
入れといたほうが絶対いいよ。
中島
そうよね。
糸井
で。
で、なんですが(笑)。
中島
「で」?
糸井
みゆきさんは、自分のアルバムの話をしないままに、
何年もお過ごしであられる。
「こんな曲を出したんですよ」とか、
そういう取材を見た覚えがないんです。
中島
そうでしたっけ? フフフ。
糸井
つまり自分ではそういうことを
意識してないのかな(笑)?
中島
‥‥いや、けっこう説明した気が
するんですけどね(笑)。
糸井
ああ、そうなんだ!
中島
‥‥ような気がするんですけど、
どうですかねぇ?
糸井
みんな(スタッフが)ニヤニヤしてるよ(笑)。
中島
アハハハハハ。
「ああ、あれでもやったつもりなんだ」って。
糸井
昔はもっとしゃべったわけ?
そもそも、たくさんは
(メディアに)出てないよね。
中島
昔からそんなに、取材そのものがない。
糸井
来てるの断ってるだけでしょう。
中島
喧嘩になると悪いから。くくく。
糸井
もう(笑)。何ていうんだろう、
その歌を歌うことがもう説明である、
歌いたいことが、言いたいことだから、
っていう感じがするよね。
それは思い切りがよくてとてもいいなと思って。
中島
アルバムで、1曲ずつ、
自分で説明をとことん書いたのもあるんですよ。
『前途』っていうベストアルバム。
たとえば『銀の龍の背に乗って』の
龍の背がなぜ銀なのかというと、
あれは手術用のメスの色だからなんですよ、とか。
糸井
!!!

中島
でも、それも私、けっこうあちこちで
言ったつもりだったんだけど、
そうやって書くと、
「そうだったんですか!」って。
「いや、ずいぶん昔、私、言いましたけど」
みたいなのがね、あるんだね。
糸井
そうですよ。
僕は直接聞いて本当うれしかったのが、
『空と君のあいだに』で
その「あいだ」に雨が降ってるんだけど、
あれは何? って訊いたら、
犬の視線の歌詞なんですって言われて‥‥。
中島
はぁい、はい!
糸井
もうそれからあの歌がますます好きになった‥‥。
中島
ヘヘヘヘへ。

糸井
そういう覚えがあったから、
解説してもらうのも、案外いいものだなと。
中島
そうか、「空君」の話は私、
コンサートのトークでは散々言ってるけど、
じゃ、それを取材で言ったかっていうと、
言わなかったのかもしれない。
コンサート用に、ネタを取っといたのね(笑)。
糸井
それはとてもいいですよ。
つまり、画がもう一回
コンサートで見えてくるわけだから。
すごくいいですよ。
中島
ね、想像して、面白がっていただければ。
犬の気持ちでね。
糸井
いや、面白がりました。
まずは、その歌詞に違和感を感じてた人のところに
スッと届くわけです。
「♪空と君とのあいだには‥‥」って、
聞き逃してればそのままだけど、
「え、どういう関係?」って思うわけで(笑)。
中島
「この距離感は何?」みたいなのが。
糸井
僕は犬を思いつかなかったから、
「それ何なんだよぉ?」と思ってた。
だから解説を聞いてうれしかったんです。
で、
で、なんですが(笑)。
中島
「で」(笑)。
糸井
今回も、えらくちゃんとしたものを
お作りになっていらっしゃるんで、
どうしたんだろう? っていうぐらい、
僕はビックリしました。
もうスタッフが宣伝で書いているけど、
「中島みゆきが“中島みゆき”を歌っているアルバム」
って。
たしかにみゆきさんが、中島みゆきを歌ってますよね。
中島
‥‥(すこし黙ってから)そうですか? フフッ。
糸井
なんかちょっと取り調べみたい(笑)。
だってさ、それこそ『自画像』という
タイトルの歌があったりして、
中島みゆきのいろんな面が
自然に見えてくるという構造になってる。
犯人としては、どうなの(笑)?
中島
アハハハ。記憶にございません、ハハハハッ。
糸井
お認めになられても差し支えないですよ(笑)?
中島
確かに、『自画像』なんていうのが
入っちゃってますからねぇ、はい。
糸井
若いときに自画像を描くというのは、
けっこうみんなしたがるんですよね。
それこそゴッホみたいな人でもさ、
若くして亡くなった画家は
自画像をけっこう残してるケースが多い。
中島
うん、ありますね。
糸井
ボブ・ディランもわりと若いときに
『セルフ・ポートレート』というアルバムを出してるし、
それはやっぱり若い頃に、
周りよりも自分に興味が行く時代というのがあってね。
でも、年取ると興味が拡散して‥‥。
中島
プッ、フフフ。
糸井
だんだんと書かなくなるものだと
僕は思ってたら‥‥。
中島
ここへ来て(笑)。
糸井
ドカーンと書いてるから(笑)。
中島
そうねぇ。
糸井
一つには「どこにも行かなくても自画像は書ける」
という面白さがある。
さっきのゴッホでいえば、
モデルを雇ったりするのがお金もかかるけど、
自分というのは逃げないから描きやすい。
今回の、デリカシーに欠ける女の話、みたいにさ、
「これはある日、私のスケッチした私ですけどね」
っていうふうなところで、年を取れば、
「これが私です!」じゃなく自画像が描けるようになる、
とも言えるじゃないですか。
中島
ええ、ええ、ええ、ええ。そうねぇ。

(つづきます)
2020-02-06-THU


  • 岛爪
  • 本家
    14
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糸井
このような歌は、いっぺんに、
このアルバムのタイミングに合わせて作ったんですか。
それとも前に作ったのが入ってるんですか。
中島
私はね、ものすごく時間かかるんですよ、書くのに。
だから、最近書いた、っていうことはないですね。
糸井
例えば10年以上前にちょっと書いたみたいな?
中島
はいはい、はい。
糸井
で、あとで完成させるみたいな?
中島
そうそうそう。1行ずつ1年おきとか。
アハハハハ。とってもかかるの。
糸井
はぁー‥‥!!!
それ、今言われたら、すごく伝わってきた。
そうか、あぁー‥‥それはすごいことですね。
僕、いつか年取ったら、
もっとそういうことしてみたいと思ってるんだ!
中島
今はまだ描けない、
出来上がらないものっていうのが、
まだ、ねぇ、ありますもん。
糸井
まだ、いっぱいある?
本当ですか。‥‥僕にはない!
中島
(笑)一生描かないでしまう場合も
あるんでしょうけれどもね、
そのうち描こうと思ってるうちに、
「あ、死んじゃった」みたいなことも、
あるかもしれないけどもね。
糸井
うんうん。
その「あ、死んじゃった」という可能性がある、
って思えるようになるまでには、
やっぱりちょっと長い若さがあって。
確かに今頃になると、
自分がいなくなっちゃうってことを
想像できるようになりますよね。
中島
そうですね、うん。
糸井
アルバムの中の
『歌うことが許されなければ』も、
「どうして私は歌ってるんだろう」とかさ、
「一生私は歌って死ぬんだろうか」とかさ、
「え、こういうつもりだったんだっけ」とかさ、
「歌うっていうことにこんなに関わってる私」
っていうのが、歌う人から語られてるように見えて。
若いときには、こんなの作んないだろうな、
って思ったんですよね。やめちゃう可能性あるし。
でもやめなかったじゃないですか。
中島
そうねぇ。
糸井
これ、いつ書き始めた歌ですか。
中島
『歌うことが許されなければ』は、
国を追われた難民の人たちの歌なんです。
難民問題が世の中に浮上し始めた頃から、
うやむや、うやむやと作りはじめました。
糸井
その難民問題と、
自分が一生歌ってきたっていうこととは、
自然に重なっていくの?
中島
自然に重なる部分ですね、もちろん。
他人事だけでは歌にならないから、
そこと自分が共感できるところで
歌が出来上がった、ってことですかね。
糸井
‥‥「空君」が犬だって聞いたとき以上に、
今、ビックリしてます。
完全に、自画像みたいなところでしか、
僕は、捉えてなかったから。
中島
なるほど、はい。
国を追われて難民キャンプに入って、
自分の国の言葉をしゃべったり、
自分の国の歌を歌うことを許されない状況が、
『歌うことが許されなければ』。
なら、どこへでも行くわ、ってことですね。
糸井
曲のトーンも、とても日本的というか、土俗的というか、
ちょっと「私の根っこの根っこのところで歌ってますよ」
みたいなローカリティを感じたんですよね。
世界普遍の歌じゃなくて、
民族性入ってんなぁ、って。
今の話を聞くと、その理由もわかる気がします。
中島
そうですね、民族音楽っぽい音になってますね。
それはアレンジするときに
アレンジャー(瀬尾一三さん)にその話をして、
難民キャンプですよって。
なら、アメリカン! なアレンジをするんじゃなくて、
この音かな、と。
糸井
あぁー! えぇーっ、
このアルバム、そんなことだらけなんだろうな、きっと。
中島
だらけ、なんです。
糸井
そうなるとね、うわー、困ったな!
訊きたいと思っていたことが、崩れちゃうよ。
中島
歌詞の意味みたいなところでは、
誤解を招きかねない、
みたいなことをサポートするために、
対比で英訳の歌詞を載せてるんです。
日本語の歌詞だけだと、
主語・述語がはっきりしないことが多いんですよね。
そうすると、取りようによっては
自分のことだか相手のことだか大混乱になる。
でも、英語って融通がきかないから
主語・述語がはっきりしないと成立しないんです。
なので、英訳を載せることで
意味をわかりやすくしている
つもりではいるんですけれども、
糸井
はぁー!
歌詞に対訳の英語をつけていることを、
僕は、全然、そのままにしてましたよ。
中島
昔は英訳の歌詞を別に入れてたんですけど、
結局見られないままなので、
今はもう対比で、
「見てね」って感じで載せてるんです。
糸井
もう1回英語を見なきゃ。
中島
はい。そんな難しい文章にはしてないです。
しばらく、英文の歌詞をお読みになる時間、
待ちましょうか? フフフ。
糸井
うーん、いやいや、
僕はいちリスナーとして、
「こうだったんですよね?」
から始めるしかないから、
それで行きます。
中島
はーい。

(つづきます)
2020-02-07-FRI


  • 岛爪
  • 本家
    14
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糸井
このアルバムで僕が
いちばん最初にビックリしたのが
『観音橋』だったんですね。
中島
はい。
糸井
『自画像』も
『歌うことが許されなければ』も
何だっていうことが全然わかんないときから、
『観音橋』って歌が入ってきて。
曲の中で観音橋が見えた途端に、
渡らず右へ、って言われて。
中島
エヘヘヘヘ。橋なのにいきなり渡らず。
ね、失礼しました。
糸井
すごいと思った!
橋を見ているっていう状態で、
橋だから川なり水があって、
それを渡らないで右へ、
っていうのが書きたかった人がいるんだ、って。
中島
ガハハハハハッ。
糸井
つまり、両地点をつなぐのが橋だから、
つなぐものを絵に描くはずなのに、
渡らず右へ、は、相当ビックリして。
中島
ですねぇ。
いきなり急ブレーキですもんね。
ハハハハハハハッ。
糸井
それでさ、いつか渡る、って話を
してるわけでもなく、
私はこっち側にいる異邦人です、
っていうようなことを言ってて。
たしかにその境遇はいくらでもあるわけですよ。
ところが今まで、それを描く人はいなかった。
僕は初めてそんなものを見ました(笑)。
中島
グフフフ。
糸井
このアルバム全体の中で、
こんなふうなムードというか、気持ちが、
ずーっと全体に渦巻いてるなと思ったんですよ、
『観音橋』で。
この曲に、何か言える秘密が隠れてるとしたら、
何なんですか。
中島
‥‥英訳。
糸井
んもう(笑)。
中島
アハハハハ(大喜び)!
英訳タイムでぇ~す!

糸井
『観音橋』は倉本聰さん脚本のドラマ
『やすらぎの刻~道』の主題歌のひとつですよね。
でも、それに合わせて作った感じでは‥‥。
中島
レコーディングしているときに、
倉本さん、使える曲ないかなって来てくださって、
じゃあどうぞってことで。
糸井
そうか、ぴったり合ったんだ。
中島
確かに倉本さんからは、
テーマ曲が欲しいって話がだいぶ前からあって、
台本もかなり前にいただいていたので、
それを頭の隅には置いていましたね。
だから、合う‥‥かな、
っていうふうな匂いがあるのかもしれないですね。
倉本さんも、これがいいって
えらく気に入ってくださって。
糸井
倉本さんの今度のドラマっていうのは、
それこそ、あの世とのキワで生きてる人たちが
生きてらっしゃるわけでね。
ものすごくシンプルに言えば、
橋をお渡りになる方もいるし、
右に曲がったり、渡りかけて戻る人がいたり。
それがドラマの中に描かれてるわけだから。
いろんなシチュエーションで
それこそ観音橋というのはあって、
あなたにも、この人にも、それぞれの観音橋はあって、
それを渡る渡らないの話であり、
向こうとこっちの世界が似ているけど違う、
という話でもある。
その意味で、この曲も、
普遍性と個別性というか、
それがうまいことできていて。
恐ろしかったですよ。
これもやっぱり、つくるのに、
時間をかけているということですか。
中島
そうですね。これは熟成期間が長いですね。
糸井
今、改めてそうだろうと思います。
織物を作っていくように、
時間のかかった歌だってこと。
降ってきたように書けるものじゃないですよ。
中島
うん。
糸井
こまかく足されていくんですか、歌詞って。
それとも、1曲分書いたものを、
直されていくんですか。
中島
ん‥‥、動かない部分もありますね。
何十年経ってもそこは動かない、
という部分もある。
でも、言葉を変えないと今の私じゃないな、
っていうときは言葉を変えるし、
それがごしゃごしゃに交じってますね。
例えば『観音橋』に出てくる
「グスベリ」は、変わらない。
何十年経ってもグスベリはグスベリ。
糸井
使いたかったんだね。
その物が置きたかったんだね、そこにね。
中島
うん。私にとってはグスベリはグスベリなの。
グスベリが、ナントカフルーツみたいなものに
なっちゃダメなの。
糸井
これは北海道の?
中島
北海道の人は‥‥いらっしゃいませんね?
ああ、残念、北海道の人はすぐわかります。
糸井
うんうん、そうなんだろうなとは思いました。
で、同時に、匂いとして宮沢賢治が出てくる。
中島
はい。土着性ね。
糸井
「ぶっつけたの、誰ぁれ」みたいなのは、
それこそ子どもの童謡的な言い方で、
すごい小っちゃい人たちの世界を感じさせるし、
グスベリには、
ベタベタっとしない昔話みたいな、
そんな匂いがするから、
きっとこの人はこういうふうに
書きたかったんだろうなって(笑)。
中島
ハハハハハ。
糸井
筆の跡が気持ちがいいんですよ。
しかも、メロディが、
誰の心にもスッと入っていけるように
できてるんです(笑)。
ああいうメロディっていうのは、いいですよね。
そこの領域がちゃんと、もうひと地図、
広げられますよね。
中島みゆきが和音階の世界を獲得した、
使えるようになったという感じもしますよ。
中島
エヘヘヘ。
糸井
だから、歌えちゃうんですね、
おばあさんとか子どもでもね。
中島みゆきの歌ってみんな
ちょっとそういうところがあって、
詞の手伝いを曲がしてくれてるっていうか。
中島
うん、そうねぇ。
糸井
どっちが先なんだか僕はわかんないんですけど。
あ、聞けばいいんだ。
どっちが先なんですか?
中島
ものによって、
パーツパーツによってね。
糸井
じゃ、曲も途中までできてるとか?
中島
ええ。
糸井
面白いね。その根気みたいなもの。
中島
執念深いんですよ、私、けっこう。
糸井
ウフフフフ。
中島
アハハハハ!
糸井
つまり、何だろう、本職性?
それこそ歌うことを仕事にしてるし、
人生にしちゃった人の、
本職だから違うことできない、
っていう感じがする。
中島
うん、そうねぇ。
糸井
でも、ほとんどが詞でしょう、先にできるのは?
中島
いや、そうとも限らないです。
ほとんど同時っていうときもあるから。
ほかの作曲家さんと組んだら
「曲先でーす」という場合もあるけれども、
自分のに関してはもう、ごっちゃごちゃですね。
糸井
おしゃべりのリズムみたいなものに
とても似てますよね、この曲は。
中島みゆきが語ってるみたいにも聞こえる。
中島
うんうん。
糸井
だから、すべての意味でこの『観音橋』が
今回のアルバムの代表になるような曲に思えて。
中島
あら、うれしいですね。
糸井
これはやっぱり自分でも好きなんだね(笑)。
中島
けっこう好き(笑)。
手間がかかってますから。
手間のかかる子がやっと、って。
エヘヘ。
(つづきます)
2020-02-08-SAT


  • 岛爪
  • 本家
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上一层掉了最开始一张图


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糸井
「中島みゆきが“中島みゆき”を歌っているアルバム」
という言葉に、僕は、
逆に言えば足を取られたかもしれない。
中島
ありゃりゃ。
糸井
つまり、いろんな光を当てて
自分のことをまとめて書こうかなって
思った時期のアルバムに思えちゃったんです。
中島
でも、そうですね。
それでこのタイトルも、
自分のこと、なんです。
『CONTRALTO』(コントラアルト)。
糸井
結局そうなるわけか。
「私の声の質はこうで、高さはこうですよ」っていう?
中島
そうなんです、私の声の高さ。
女の人の声って、ソプラノ、メゾソプラノ、アルト。
私、それよりちょっと低いんです。
アルトの下っていうと、普通なかなか言い方がなくて、
説明するときは「テノールのちょっと上」
ぐらいにしか言ってなかった。
実際、アルトよりテノールに近いんですけどね。
でも、調べてて、ある日、
コントラアルトっていう音域を知って、
「あ、これだぁ! スッキリした」と(笑)。
私の音域はこれですってやっと言えるわ、みたいなね。
『テノールのちょっと上』っていうタイトルじゃ、
ちょっとあんまりでしょ?
糸井
テノールのちょっと上、っていうと、
主語が男性になっちゃう。
それも違うよね(笑)。
中島
そうなの。
糸井
女性の声で、一番男性の声に近いところ。
中島
そうそうそうそう!
糸井
「コントラアルト」の声域には、
ほかにはどんな人がいるの。
中島
ジャズの人はけっこういます。
かわいげとか華のある音域じゃないんですよ。
糸井
でも、説得力はあるよ。
中島
ドスのほうに行っちゃうの、どうしても。
糸井
女声の中ではもしかしたら
いちばん説得力があると思うなぁ。
そもそも体のでかい人の音域でしょう、多分。
中島
そうですね。サラ・ボーンとか。
胸板のある人ですね。胸板っ!
糸井
みゆきさんはそんなに厚くないけど。
中島
薄~い。ハハハハッ。
糸井
胸板の厚い中島みゆきがいたらすごいね(笑)。
低い声出してる人のほうが
潰れやすいって聞いたことがあるけれど、
全然潰れないですね。
声は全然大丈夫みたいね。
中島
ファルセットを使うと
喉に負担があまりかからないから、
そう言われるんでしょうね。
地声のほうを使うと、筋肉を余計に使う。
私が大丈夫なのは『夜会』のせいですね、多分。
『夜会』は自分の声のラクなところに関係なく、
役のために、高いとことか低いとことかを使うから、
鍛えられちゃったかな。
糸井
台詞と歌は音域が全然違うわけだから、
その大変さはあるよね。
中島
そう、しゃべる声と歌う声は違うから、
両方やるのはきついんですよ。
喉のために、よくはない。
糸井
それでやっと気づいたその声域の呼び方を
アルバムのタイトルにしたんだ。
中島
そう。「やっと名乗れました」
っていうタイトルをつけたんです。
だから、『自画像』も入ったし。
糸井
そうかそうか。じゃ、曲を作るように、
アルバムも作りかけの状態で、
ふわふわさせといて、足したり引いたり?
中島
ですです。
糸井
じゃ、僕、足を取られてよかったんだね。
中島
はい。そういうふうにできてるんです。
足元悪いんです、とても(笑)。
糸井
もうねぇ、悪い女だね(笑)!
中島
アハハハハハ。
こけたら優しく抱き起しますから(笑)。
糸井
それを聞いたら、
ちょっと気持ちよくなった、逆に(笑)。
そうか、違うとか間違ってるじゃなくて、
そんなふうに手を引かれて
一緒に歩いてるっていうのがリスナーの‥‥。
中島
楽しみなのね、フフフフ。
糸井
僕、まだ、だって受け取ってからそんなでもないからさ。
4回聴いたのかな。
中島
あっらぁー。
この時間のない中。
糸井
うん、聴いたんだよ。
珍しいことしたんです、けっこう。
で、連れていかれる感じっていうのは
やっぱり楽しいわけでね。
『夜会』もそうなんです。
舞台で一緒の空間にいると、
「こいつがなんかこういうところに
連れてこうとしてるな」っていうのに(笑)‥‥。
中島
イヒヒヒヒヒヒ。
糸井
舞台だと「いいよ、いいよ」って一緒に行くんだけど、
普通、アルバムはそうはいかないんですよ。
でも、これはけっこう連れていかれる感があってね、
「うん、僕はそっち行きたくないけど、行くよ」(笑)。
中島
「そっち行きたくないけど」(笑)!
糸井
「そっちに連れて行かれる」と覚悟していると、
あいだあいだに『齢寿天任せ』
(よわいことぶきそらまかせ)みたいなさ、
「連れてってくれたのはいいんだけど、
おまえ、天任せかよ!」
みたいなところだとか(笑)。
中島
「どこまで行っちゃうんだよぉ~」みたいな。
アハハハハ。
糸井
それはね、やっぱり経験がやらせることでね。
おじいさんとしては、
「いいなぁ、こういうの、俺もわかるよ」
って思うんだ。
中島
うちのお客様の年齢層も、だんだん高齢化してですね、
「やすらぎ」世代になってきてますから、
皆さんおわかりいただけるようになってます。
フフフ。
糸井
「それでいいのだ!」って思った(笑)。
中島
「それでいいのだ!」。ハハハ。
糸井
でもね、やっぱり本職だからすごいところがあってさ、
「天任せ」も、
テンじゃなくてソラって読ませてるじゃない?
こういうところがやっぱり本職ですよね。
テン任せって言っちゃうと
本当に運命の話になるから。
ソラってルビをふると、
みんなのものになりますよね。
中島
ちょっとやんわりと。

(つづきます)
2020-02-09-SUN


  • 岛爪
  • 本家
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糸井
『おはよう』にもやっぱり似たものを感じるんです。
若いときには作れないなっていう。
中島
そうですね、うん。
糸井
孫ぐらい離れた人に年寄りが遊んであげてる、
みたいに聞こえるわけ。
リズムで遊んでいくっていうか、
「おはよう」の数、めちゃくちゃ多いですよね。
中島
多いですね。
糸井
思いやってるんですよ、聞いてる人を。
だけど、「どうすればいいんですか」に
「おはよう」って答えが来るっていうか。
これ、誰に言ってるつもりなんでしょう。
中島
これもですね、英語の歌詞をごらんください。
糸井
うっ、うぅーーーん!
中島
エヘ。
英語のタイトルだけでもお読みいただけると。
糸井
Awakenings‥‥???
中島
‥‥Good morning、じゃないんです。
糸井
本当だね。そして歌詞のなかの「おはよう」は
「Wake up」、起きろ、なんだね。
中島
はい。
糸井
じゃ『ファイト!』の意味も入っちゃうんだ?
中島
どうでしょう? フフフフフ。
糸井
じゃあ、全然違っちゃうじゃない!
中島
うん。
糸井
‥‥ひでえことをするなぁ。
中島
英文が書いてあるだけ親切でしょう?
糸井
さっきの難民の話並みに参った!
確かに英語がついてる理由があるんだ。
やっぱりこの何度も繰り返す日本語の
「おはよう」っていうのが必要ですよね。
これ、「wake up」って
英語で歌っちゃったら変わりますよね。
中島
変わりますね。
「誰が」おはようなんだっていうことが、
日本語だけだとちょっとわからないから、
いちばん最初の英訳はやっぱり
「good morning」って来ました。
で、説明をいっぱいして、
これだっていうことになって。
起きた人が自分で
「おはよう~」って言うのも「おはよう」ですよね。
でも、起こすときに、寝てる人に
「おはよう」って言いません?
だから「wake up」です。
すごく、すごく腑に落ちたでしょ?
糸井
すごく腑に落ちた。
もうね、優しい。
大雑把に言うと中島みゆきは優しい。
中島
ンフフ。

糸井
中島みゆきを聞くことで、
僕らは日本語のニュアンスを全部知ってるがゆえに
誤解もできるし、違うところにも行ける。
同時に、違う何かを心に無意識で響かせられる。
しかも、曲がついちゃうから。
中島
そうそうそう。伴奏もついてますからね。
糸井
そうだよね。間奏のあいだ、黙ってたりもできるからね。
中島
そうなんですよねぇ。
糸井
歌ってすごいね。
中島
すごいねぇ。
私が歌わなくても、
ピアニストとかギタリストが
一所懸命“歌って”るしねぇ。
そこで色がつくから。
糸井
すごいね。
小っちゃなスケッチが壁画みたいになっちゃうよね。
でも、それは広げられるように描いたからだよ(笑)。
中島
私はあまり、何ていうか、
それこそ‥‥写実的な歌詞って書いてないんですよ。
糸井
書いてないね、うん。
中島
だから、いかようにも取れる。
それはある意味、
私が立ち入らないほうがいいことだと思うんですよね。
そのように解釈してはいけないというものではないから。
ときどき「おお」みたいな(笑)、
私もビックリするような解釈も出てきますけど。
でも、そこはもう嫁に出した子みたいに
離しておいたほうがいい部分なのでね。
最小限、誤解よりはちょっとわかりやすいかな、
ってとこの限界が英文のところですね。
英文もね、そこまで説明しなくていい、
ってところは書いてないの。
糸井
これ、僕なんかだと根性据わってないからさ、
こんだけ「wake up」を続けると、
「good morning」を混ぜる気がする。
つまり、俺はずるくって、
そのずるさの種類が中島みゆきと違うんだ(笑)。
中島
ハハハハハハハッ。
糸井
みゆきさんも「ずるい」のうちに入ってると思うよ、
たとえばハート型の何かを渡したら、
それは物を渡したんじゃなくて
ハートを渡してるじゃないですか。
それはずるいですよね、すでに。
というのと同じようなことを、
作詞家は、多分、やるわけで(笑)。
中島
ヤハハハハハ。
糸井
ああ、『おはよう』面白かったなぁ。
こんなことをあちこちしてるんだな?
中島
でも、そういうことって、
例えばジョン・レノンも、やってませんか。
糸井
やってますよね。
中島
やってますよねぇ。
糸井
それはもうみんなやってるんだけど‥‥、
多分、なんですけど、
こんなに時間かけた絵は描いていない。
中島
ああ!
糸井
だから、1回レントゲンかけたら
見えちゃうみたいなところがあるの。
見えたほうがみんなも喜ぶから。
中島
スッキリするしね。
糸井
でも、みゆき様の、
やっては、またやって、みたいな、
何年もかける書き方だったら、
こういうことは、したいし、できますよね。
『おはよう』については、
「wake up」に気付かないとき、
「息を吹きかけるように」って僕は思ったんです。
速度の指示みたいに、
楽譜に息を吹きかけるように、って。
中島
あ、それは「wake up」にちょうど合うと思います。
糸井
そっか、そういう重なり方はするんだ(笑)。
でも「おはよう」は僕は「おはよう」でしか
捉えてなかった‥‥。
中島
皆さんね、英文はあんまり読まないんです。
糸井
英語の人たちに向けて書いてあるだけかと思うもの。
中島
そこにヒントがたんまり!
(つづきます)
2020-02-10-MON


2025-08-18 07:10:01
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  • 岛爪
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糸井
『ルチル』はもう、
タイトルが僕はわかんなかった、すでに。
中島
あ、そうですか?
女性の方はけっこうわかりません? 「ルチル」。
わりと普通なものかと思ってた。
糸井
教えて。
中島
ルチルクォーツ。
糸井
あっ、石だ! そっか。
中島
水晶の中に、金の線が
スーッと入るときがあるんです。
キズのようにも見えるけれども。
糸井
はいはいはい。
針みたいな、ヒューッとなったやつ。
中島
そうそうそうそう。
糸井
あのクオーツか!
中島
はい。
糸井
これはね、もうね、
うっとりするほどいい1行が、
「水の石の中のささやかな真実」。
中島
うんうん、それ英語の人、
本当に倒れそうに悩んでました。
糸井
そうだよ、だって、形容が複数になってて。
中島
「水の石」が、そもそも英語では成立しない。
「水晶って書きゃいいじゃん」
みたいなものなんですけどね(笑)。
糸井
英訳はさっぱりしてますよね。
Small truth in the rutile quartz。
これを日本語で見るとものすごく‥‥。
中島
格調高くてわかんない(笑)。
糸井
英語は記号ですよ、完全に。
中島
そうですね、文字を見て想像する、
というものじゃないですからね。
ワシら漢字の人でよかった。
漢字の世界、楽しいですよね。
糸井
面白い。
中島
想像できますもんね。
糸井
小沢健二が子どもの先生から言われたというのが、
英語の教科書は英語という「道具」を教えるけれど、
日本語の教科書は日本語という「情緒」を教えるって。
中島
ほぉー。
糸井
昔々に吉本隆明さんが、
英語の言語論は暗号の解読から来てるから、
言葉がどういうふうな構造で、
どういうふうになってるというのを
解読するときに必要で、
それが解体されていくと言語論になっていくと。
日本語の場合っていうのは、
その言葉がどこから発せられてるか、
たどると心になるわけで、
その心の中に経験とか今までの時間が入ってる。
だから、全然違うものなんですよって。
中島
そうでしょうねぇ。
糸井
この「水の石の中のささやかな真実」は、
たまらないですね(笑)。
書き手の心をたどりたくなりますよ。
隠してるわけじゃなくて出しちゃったものだから、
僕ら、鑑賞できるんだけど、
でも、もうこの1行があったら、
前後の歌詞なんか要らないと思っちゃうのが
僕の仕事で(笑)。
中島
アハハハハ。
糸井
だけど、みゆきさんはこれにこれだけの‥‥、
説明じゃなくて言葉をちゃんと入れて歌にしてるわけで、
また織物ですよね。タペストリーです。
中島
うん。

中島
ルチルクォーツって、
「ゴミ?」みたいなものが入ってるんですよね(笑)。
ほんとうにゴミに見えるんですよ。
糸井
針生姜みたいな。
中島
そう、あれが1本入ってるの。
いや、いっぱい入ってるのもある。
糸井
向きも揃ってるようで揃ってない。
で、その石を見つけたときに、
中島みゆきは石から始めるんじゃなくて、
桜から始めるわけですよ。
でも、さっき時間をかけて書いてるって聞いたんで、
ああ、よかったって。
それがいっぺんにできる人がいるんだとしたら、
すごく腹が立つから(笑)!
これを例えば「私は半日で作りました」つったら‥‥
ちょっといやだね。
中島
ダハハハハハハハ。それは相当の超人ですわ。
糸井
この石の話をね、桜で心でって出してね、
つかむんですよ、ふわっと。
しかも2行目が「私に」じゃなく「私の」。
「何」にかけるための「の」だから、
その照明が「何」に強く当たるんです。
で、強く照明を当てたところで
我慢しきれず3行目で石を出しちゃう(笑)。
いいねえ、面白いね、
これは時間をかけないと書けない。
中島
あっちゃこっちゃ寄り道しないとねぇ。
糸井
鉱物ってやっぱり書くの難しいですよね。
鉱物の歌、ほかにないでしょ、あんまり。
中島
なかなか表情が見えづらいですからね。
糸井
同じ生きとし生けるものって言えないし、
生命からの距離が離れてるものだけど、
それを書けるかもなと思ったときには
めっちゃくちゃうれしいわけですよね。
中島
鉱物にも時間がかかってますからねぇ。
私らよりもはるかに長い時間が。
糸井
四十何億年です(笑)。
細胞だの分子だの言ってるときには、
仲間になれる命というのがわりと実感できるんだけど、
電子とかって言っちゃったときには
仲間が圧倒的に増え、すべてになっちゃうわけで、
だから鉱物を僕らの感性の
仲間の中に入れていくっていうのは、
相当はるか遠い思いになっちゃう。
「そこに咲いてる雑草でもあなたと同じ命ですよ」
っていうのは、みんながわかるんだけど、
「路傍の石とあなたは同じですよ」
っていうことを言うのは、めちゃくちゃ難しい。
そういう歌って‥‥。
中島
‥‥「君が代」?
糸井
あ、そうだ。そうだ。さざれ石さん。
中島
あぁー。アハハハハハッ。
糸井
これ、本当に、みゆきさんが、
本職としてずーっと歌を作ったり歌ったりしてきた、
っていうことに僕らは憧れます。
中島
ふーん?
糸井
そのできるっていうこと自体、運命でもあるしさ。
だから、すごいことだなと思いますね、
この『ルチル』を書いたのは。
どんどんどんどん語ってるんだよね。
形あるものも形なきものも。
中島
ヘヘ。
糸井
鉱物を歌うのは難しいけど、
女たちは、宝石っていうものに対して
親和性があるじゃないですか。身につけたりとか。
今も、ブレスレットがキラキラしてますよ。
中島
ああ、しょっちゅう見てますかねぇ。
糸井
そういうの僕らにないもの(笑)。
せいぜい、溶かせるようなものばっかり。
金とか銀とか。
形をコントロールできるし。
鉱物と私を一体化させる詞って
僕はどこかで見た覚えはないよ。
『ルチル』は、あの針生姜が、
あいだで仲立ちをしてくれたわけだよね。
『観音橋』がこっちとあっちを結ぶように。
(つづきます)
2020-02-11-TUE


  • 岛爪
  • 本家
    14
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糸井
じつは僕も個人的にミネラルが好きなんだ。
中島
おや!
糸井
ミネラル博に行ったりとか、
自分で妙な石だとか化石だとかを
所有したがるんですよ。
中島
私も子どものときから好きでした。
糸井
あなたもですか!
中島
鉱物見本ってあるでしょ。
うっとりしますよね。
糸井
そうなんです!
中島
(深いため息)「あぁ~‥‥」って。
蟻んこの頭ぐらいしかなかったりするんですよね。
「どこに?」つうぐらいの大きさ。
糸井
そのバリエーションの中に虫入り琥珀だとか、
ルチルクォーツが入ってたり、
あるいは占い師たちの好きな
水晶の中に何かを感じるだとか、そういうのが入ったりね。
僕は男だから化石側にちょっと行くの。
中島
あ、なるほど。やっぱり生き物のほうへ。
私も今でも売場に行って、
うっとりして眺めてますよ。
糸井
ちょっと、自慢していい?
待ってて(デスクに何かを取りに行く)。
‥‥これ。
手で普通に触ってもいいです。
中島
あ、牙だ!
糸井
これはティラノサウルスの牙。
中島
え? 素敵!
糸井
昔、手に入れて、
いずれはペンダントにしようと思ってたんだけど、
それじゃ、強い人みたいじゃないですか。
ちょっと違うなと思って、そのままなんだけど、
そしたらですね、さきおとといかな、
もっとでかい牙を見つけてしまって。
中島
おや。
糸井
家庭には内緒で、もうすぐ到着するんです。
7センチらしいんです。
中島
おおお。これがねぇ、生えてたのねぇ~。
糸井
6600万年ぐらい前に、
これが生えてた人がいたんだね。
多分これは子どもなんですけど。
中島
小っちゃいもんねぇ。
糸井
ギザギザがついてるでしょ?
パン切り庖丁みたいになってる。
中島
あ、本当だ。
素敵。パン切り庖丁。
私、ティラノ好きです。
ティラジョです!
糸井
ティラノは格がね。
王ですからね。
中島
最終形ですから。
糸井
もっと強い恐竜とかいても、
王はティラノなんです。
中島
そうなんです。
毛が生えてたんですよね。
わぁー、わぁ、いいな。
ありがとうございます、大変なものを。
糸井
三葉虫とかだと、
時間的には古生代(5億7500万~2億4500万年前)
まで遡れるんですよ。
「こいつが2億何千年前にいたんだな」って思うと、
ちょっと気が遠くなるじゃない?
その気が遠くなるのを味わうには
三葉虫というのはとってもいいんですけど、
三葉虫自身が、そのう、
ダンゴムシみたいなものだから‥‥
中島
ダッ、ハハハハ。
糸井
あまり憧れられないんです(笑)。
中島
そうなのね。
糸井
ティラノサウルスの6600万年前に比べたら、
三葉虫、格上なのよ、時間的には。
でも、こっちのほうが憧れられる(笑)。
中島
思い入れするにはねぇ、こっちなんです。
糸井
ティラノはね。
中島
ええ。
糸井
いや、うれしいです(笑)。
中島
ティラノはいっぱい旅してるんですよねぇ。
ちょっとずつ大きくなって、
やっとあそこまで行ったんですよ。
糸井
日本にも似たようなやつがいたんですよね。
中島
そうそう。
恐竜の歌も書きました。前に。
『昔から雨が降ってくる』。

中島
昔、私たちも恐竜だったかもしれない。
糸井
いや、そうなんだ。本当にそうなんだよね。
中島
ね。
糸井
ああ、「本当にそうなんだよね」を
わかってもらえたときのうれしさ!
中島
ね。ヘヘヘヘヘ。
糸井
でも、石までは遡るの難しいの。
中島
デッ、ヘヘヘ。
糸井
やっぱりね、生きてないっていう、
つまり無機物に対しては、
共振するって難しいんですよね。
でもね、ちょっとあるんですよ。
そのどこかで石ころも自分も、
たどったら同じだったっていうね。
実際に巨石信仰みたいなものあったわけだし、
人の中には組み込まれてるのかもしれないけれど、
ただ、歌にした人は、
あんまり‥‥いないと思うよ(笑)。
さざれ石、以外に(笑)。
中島
フフフフ。
糸井
これ、ささやかな真実の歌だからね、最終的には。
中島
小っちゃいものなんです、はい。
糸井
ささやかでも、ささやかでなくても、
真実ならば価値は一緒だから。おそらく。
おもしろいことしてるなぁー!
(つづきます)
2020-02-12-WED


  • 岛爪
  • 本家
    14
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糸井
みゆきさんが作るのは、曲をつけない詩人には
書けないタイプの言葉なんですよね。
中島
やっぱり音楽向けなんでしょうねぇ。
糸井
その作詞というジャンルは、
本当に一番自由を持ってる気がして。
中島
言い訳しやすいんですよ。
音楽で言い訳できるから(笑)。
糸井
そうそうそう。
で、作詞っていうのは、
絵本に似てると思ってるんです。
イラストレーターっていうのは
やっぱり機能しなきゃいけないわけで、
「こういうことを書いてください」とか、
「こういうことを意味してるんです」というのを
技術で描くというところがあって。
中島
はい、そうですね、確かに。
糸井
で、純粋絵画はそんなこと
言ってちゃいけないっていうところがあって。
でも絵本ってどっちにもつながる。
だから、売れなくても絵本を描きたいという
絵描きさんはいっぱいいますよ。
文字を書く人でも、絵本でやりたいっていう人は、
とてもたくさんいる。
中島
『もっぷでやんす』っていう絵本を
作ったことがあるんですけど、
あれを詞だけで、言葉だけで出したら、
なんかえらく重くなっちゃうけど、
いやいや、そんな重いこと言ってんじゃないのよ、
って言うのには、絵が一緒のほうがよくて、
それが音楽と似てたんでしょうね。
糸井
歌は「息を吹きかける」みたいな、
優しいというか、心のあるものが乗っかれるんで
助かるんですね、きっと。
だから、絵本は、イラストレーターの人たちとかも、
儲からなくてもやったほうがいいですよね。
自分のためにもやったほうがいいと思うなぁ。
中島
自分のためにも。そうですね。
それでみんなにウケようとか、別に考えなくてね。
糸井
運よく、純粋に詩を書くという仕事じゃなくて
作詞として始めたというのは、
今の時代に生きるのにはものすごくいい。
歩きじゃなきゃダメだよっていうことじゃなくて、
自動車に乗って遠くに行けるぐらいの感じがありますね。
中島
そうですね。ありがたかったですね、それは。
糸井
みゆきさんはもともと
詩を書いてたとかはないんですか。
歌と関係なく。
中島
詩も書いてました。
でも、歌詞のほうの詞も、
けっこう子どものときから書いてましたね。
だから両方。
詩と詞。
糸井
はぁー。それは今も続いてて合流したりする?
中島
‥‥うーん、そうね、
寺のほうの詩のつもりで書き始めたけど、
司になっちゃった、ハッハハハハハ、
ってのもあるかな?
糸井
『ルチル』なんて、
寺のほうで成り立ちそうだよ。
でもいいことだね、
どっちもあるよっていうのは。
中島
箸とフォークと両方使ってますみたいな(笑)。
糸井
本当にそうだと思うなぁ。
人のすることって、そりゃ両方あるよね、本当はね。
自分にもわかんないけど言いたいっていうのはあるし。
さっきスタッフの人に、「レコード会社的には
中島みゆきのマーケティングとかってしてるんですか」
って聞いたら、
「あんまりしてません」的な答えがあって。
中島
うん。
糸井
「こういうものを欲しがってるから、これを作りましょう」
って、世の中全部がなってるときに、
このアルバムは、
どういう人がどう欲しがるから作ってるんじゃなくて、
「私が聴くから」っていう
引き受け手が「私」みたいな。
中島
うん。コンサートの曲順とか、
ベストアルバムのための参考として、
外まで出さずに、わりと近い人たちで、
アンケートを取ったことがあるんです。
でもやるだけ無駄だったということがわかった。
糸井
そもそも言うこと聞かないでしょ、
アンケート取っても(笑)。
中島
順位を出したかったの。
それで多い順からやったらウケるのかな?
と思ったんですけど、まったく意味なかったんです。
票が分かれて、結局、全曲? みたいなことになって、
統計ということは成り立たなかった。
アハハハハハッ。
糸井
いや、そうなんだろうな。
中島
そういう感じなんですよね、
マーケティングしてもね。
糸井
なんで植物がみずみずしく立ってるかみたいな話でさ、
そこんところこそが自分の生きてる意味なんで、
マーケティングなんかしたら、
立ち枯れになっちゃうというか‥‥。
今、生まれて初めて「立ち枯れになっちゃう」
って言葉を使った(笑)!
中島
プワハハハハハ。
糸井
普段使う機会ないから(笑)。
マーケティングってさ、
市場に出したらこのぐらい動きました、
っていうのがデータになるんだけど、
売る前にそのデータは出ないわけで、
売り出してから短い単位ですくって
解析したものを使うんだよね。
それが最新といわれてるんだけど、
それって卑怯だよね(笑)。
予感も予言もできてないんだから、
総イメージを増やしてないわけだよ。
出たものを見ただけだから。
その意味で、1票ずつを集めて作るっていうのは、
イメージを増やしてますよ。それが価値を生むんだから。
すごいことだと思いますよ(笑)。
中島
うん、はい、フフフフ。
糸井
このアルバムで、「中島みゆき、中島みゆきを歌う」
みたいなことを思ったときに、「聴く」もあってね。
「中島みゆき、中島みゆきを聴く」。
最高だよね、それって。
中島
そう、いろんな意見がいっぱいあるのは当然だけど、
「いいの、私が好きだから」
っていうことで終結しちゃうわけ。
糸井
しかも「ワガママだな」って思うんじゃなくて、
「そうしてください」って思わせる力。
音叉みたいなものでさ、
中島みゆきって音叉をコーンとやって、
こっち側(聴き手側)が鳴っちゃうわけでしょ?
みんなの音叉を集めてもそうはならないんだよ。
いいね、そういう仕事は。
大変だけどね。
何年もかけて詞を作るって、俺も一回してみよう。
まったくそういうことしたことないの、俺は。
中島
え、そうですか!
糸井
昔、こういうようなことをコンセプトとして思ったな、
っていうものを、時間が経ってから歌詞にした、
っていうのはあるよ。
前川清さんに歌ってもらった『初恋』は、
年取ってから誰かのことを好きになったら、
今までの恋は全部嘘で、
これが初恋だって思うんだなっていうことについて、
それを俺の言い分として作るみたいな歌は
ありうるなっていうことを、
ずいぶん昔に思ったことがあって。
それを年取って思い出したの。
若いときには作れなかった。
中島
なるほど。
糸井
そういうことが僕の一番作詞にかけた長い時間。
みゆきさんは、どこかに、倉庫があるの?
ノートがあるの?
中島
ない。
糸井
教えて(笑)。
中島
ん。ここ(頭を指す)。
糸井
あぁー!
だから、できるのか。
中島
うん。ノートに書いちゃうと、
多分そこで、どこか行っちゃうでしょ。
この(頭の)中でずーっと煮えたぎってれば、
そのうち、なんか煮詰まったものがポロッと出る。
糸井
だから、曲と一緒のことも多いって言ったんだね。
中島
うん。
糸井
それはじゃあ、忘れてるのも、
ほどよく忘れてるってこと‥‥?
中島
あい。
糸井
で、さて仕上げる、
っていう時が来るじゃないですか。
それはワンコーラスとツーコーラスを
全部覚えてるわけにいかないじゃないですか。
改めて(一曲になるように)書くんですか。
中島
‥‥そうね、ないものは書かなきゃね。
糸井
そのへんはもう張り付いてて見るしかわかんないね。
中島
時間かかるよ。
10年ぐらい張り付いてみる? フフフフフ。
「あと50年待って」みたいな。
糸井
しかも、見えないものだらけなわけだから。
中島
でも、誰でもあると思うけれども、
自分で忘れてたような、
子どものときに何か思った感情みたいなものが、
ある程度年食って、
「あ、この気持ち前にあった」って。
糸井
うん、あるあるある。
中島
ね? 今のことを思い出さなくても、
子どものとき思ったことが
ガーッと入ってきたりするでしょ?
糸井
うんうん。
それがいっぱいある人というのは、
子どものときにいっぱい考えたんだろうね。感じたり。
大人になってからのものって、
機能してることが多いから。
「済んじゃった」とかさ。
中島
済んじゃうのねぇ~。
糸井
うん。子どものときのものって「済まない」(笑)。
中島
済まない、済まない。
糸井
そうか、中島みゆきの作り方は、
中島みゆきという
子どもを作るしかないんだね。
どんなに勉強させても、
それは後付けのものだから。
中島
そうねぇ、方法論としてよく聞かれるんですけどね、
「どうやってあの曲書くんですか。
自分もああいう曲書きたい」って。
「50年前のとこから、同じことやりますから」
って言われても(笑)、
自分だけじゃなくて、
先祖代々のとこからのものもあるから、
「同じ先祖を持ちますか?」
ってところへ行かないとね。
恐竜まで遡れば同じ先祖を共有できるのよね。
糸井
うんうん。石まで行く?(笑)
中島
あ、石まで行ってみましょうか。ハハハハハ。
糸井
道筋が複雑な地図になってる、
そのすごい版ですからね。
「どうやって歩いて来たの?」の長さが。
でも、みゆきさん、そういうタイプの歌、
いっぱい作ってますよね。そのことを語る歌を。
中島
うん、うん。
糸井
『進化樹』もそうだし。
中島
うん。別にあのう、
そんなにいろんなこと、歌ってないんですよ。
何べんも何べんも同じこと言ってるんですよ。

(つづきます)
2020-02-13-THU


  • 岛爪
  • 本家
    14
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糸井
アルバムの中で『タグ・ボート』って歌が、
爽やかな画みたいに思えたんです。
どんなお天気でもこれは憧れるなっていうような、
広々としたものを感じて、あれはかわいい歌だな(笑)。
『タグ・ボート』があって、
このアルバムが触り心地のいいものになってる気がする。
中島
アハハハ、うん。
糸井
『自画像』で
「デリカシーのない女」って言ってる人が、
『タグ・ボート』も書いてるわけだよね。
中島
アハハハ。
たまにはお茶の一つも出さなきゃねって。
糸井
『クマのプーさん』の石井桃子の訳が
ものすごく難しい日本語、
大人が読んでもなかなか難しい日本語を使ってる。
なのに子どもが読めるじゃない?
『タグ・ボート』みたいな曲は、
それこそ意味がわかんなくても、
幼児が歌ってるのを想像すると、
すっごくいい、なんか‥‥。
中島
エヘヘヘヘ、うん。
糸井
意味を全部、
数学みたいにわかって知りたい人にとっては
困るだろうけど、そんなことあるわけないんで。
『タグ・ボート』を幼稚園のみんながさ。
最高だと思うよ。
大きく言うと『観音橋』世界の歌と
『タグ・ボート』世界の歌とが、
たて糸・よこ糸みたいになってるんでしょうね。
その中で「自画像」というのはちょっとなんか、
違う色の絵の具をちょっと入れたみたいに見えた。
中島
『自画像』って大体、
その画家の人が描いてる絵と違いますよね。
糸井
違いますよね(笑)。
中島
なんかすごい安いですよね。
絵の具の残ったのをちょっと使っただけ、
みたいな感じで(笑)。
糸井
小さいの、絵が。
中島
ね。自画像の大作ってあまり聞かない。
糸井
もっと年取るとやるのかもね。
中島
銅像を作るみたいに?
糸井
息するみたいに絵を描いちゃうってとこまで行けばね、
長々してるけど退屈だねっていう自画像は
あるかもしれない。
──
『自画像』の最後は
SE(効果音)ですよね。
ガラスの割れるような音が。
中島
ああ、あれはね、
師匠(アレンジャーの瀬尾一三さん)の趣味。
「こんなんしたけど、聴いてみて」って。
聴いたら「ガチャン!」って入ってた。
糸井
曲に額縁をつけたくなったんじゃないかな?
中島
アレンジャーとしては? そうかもね。
糸井
「アルバムの構成の中に、
あの曲はなくてもいいんじゃないか?」
ってなりやすい歌のような気がする。
少年マンガの雑誌で漫画家の人が
編集後記みたいなとこに描いた似顔絵、
みんな変じゃないですか。
あれをほかの漫画と一緒に
拡大して出すわけにいかないじゃない。
そのときはちょっと枠つけてあげたほうが(笑)。
中島
ああ、うんうんうん!
それで、「ガチャン」なんですね(笑)。
そうか、親切だったんだね、あれ。
そんなに私って破壊的というか
破滅的だと思ってんのかなぁ(笑)?
と思ったけど、親切だったのね。
糸井
ちょっと露悪的に描くじゃない、
漫画家の人の自画像。
この曲にも、それが感じられますよね。
中島
なるほどね。そういえばアレンジャー、
『自画像』をレコーディングしてるときに、
「それほどでもないだろう」って。
糸井
言った?(笑)
中島
うん。「いや、そうだってば」
「いや、それほどでも」
「そうだってば」
って言い合いがありましたもん。
糸井
小さい作品だけど、うまさはこの中に入ってるよね。
「逃げ足いちばん ど忘れ にばん」みたいなさ、
なかなか書けないよ、これ。

中島
ど忘れは、皆さんご存知ですよね。
コンサートではもう「ど忘れの中島」ですから。
歌い出そうと息を吸った途端に、ど忘れ。
拍手来ますからね、
「待ってました~」って。
糸井
本気のど忘れ!
中島
フフフ。そのあと、ファンの人たち同士で、
「今日はここを忘れた」って情報共有(笑)。
糸井
そのど忘れはもしかしたら、
長年かけて作るってことにとって、
すごくいい武器かもしれないよ。
中島
ククッ。かもね。忘れちゃうのはね。
糸井
都合よくできてるんだね。
みゆきさんって、「先のこと」って考えるの?
中島
出たとこ勝負なヤツでねぇ。
とりあえずは『夜会』、
『リトル・トーキョー』は初演だったから、
あれはまだやるかな、みたいな。
糸井
「やるだけのことをやった感」が
あなたには全然ないね。
中島
やってないからです。
「やったぜ、イエーイ!」って、ないからですよね。
「しもうたなぁ‥‥」ってことばっかりです。
糸井
貧乏性みたいなことなんですかね。
何なんですかね、それ。
その、何ていうの、最近流行りの
「自己肯定感の少ない人」には見えないんです。
ちゃんとやってるものについての距離感は、
ちゃんと見えてると思うんですけど、
「もう疲れたよ」とかさ、
「大体やったしさ」とか言わないじゃないですか、
全然(笑)。
中島
やってないからです。
失敗が多いからです。
糸井
ほぉー。
中島
失敗を取り返そうとして、
さらに失敗するんですよ、ホホホホ。
何つうんですか、こういうの。
取り戻そうとして余計、
さらなる失敗を重ねてしまうの(笑)。
糸井
みゆきさんは、
普通の人が普通に歩いてるのと同じつもりで
この仕事をやってるのかなぁ。
別に山だの谷だの、
描いてもしょうがないからね、
自分のことでね。
中島
ええ。そんなに山も谷もないですよ。
糸井
蕎麦屋だとしたらどうなんだろう?
中島
蕎麦屋?
糸井
きっと続けてるんだろうな。
「もうやるだけやったよ」とは言わないもんね、
蕎麦屋。
お客さんが来て、おいしかったって顔でも、
毎日違うじゃない?
すると、明日もやるんだろうなって。
中島
わたしが蕎麦屋だったら、多分、
気候とか水とかで全然出来が違うと思うんで、
「昨日の蕎麦はうまく打てたのに
今日の気温の蕎麦、ダメだったー!」って。
糸井
そうか。似たようなことなんだ。

(つづきます)
2020-02-14-FRI


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糸井
それにしても、みゆきさんは、
くたびれてないのがすごいね。
中島
そこが「ど忘れ」なんですよ。
糸井
くたびれるのを、ど忘れしてる?
ど忘れ、だいぶ役に立ってるね(笑)。
中島
大事ですね、ハハハハハッ。
糸井
体力?
中島
体力はごく普通ですよ。強靭なわけではない。
糸井
そこには、体力って言われている、
ヒト的には体力としてまとめるしかない力、
でも体力とは違う「何か」があるのかも。
政治家の人たちがさ、みんな年取ってるじゃない。
それで「政治家やるのは体力がないとダメなんだよ」
って言うんだけど、それは体力って言葉とは
違うと思うんだよ。
やりたいことがあって、
あってしょうがないから元気、
ってことではないと思うんだ。
みゆきさんも、
何が欲しいから頑張ります、じゃない。
「やってるのが自分だから」
っていう説明しかできなくて。
そこに「自分も他人も終わりにしてくれない」
みたいなところがあってね。
中島
そうねぇ、書かないと便秘になるから、とかね。
糸井
(笑)でも、そうです。
だって、ど忘れしたり、
絶対覚えておこうと思うものが、
むちゃくちゃに記憶として宙に浮いてるわけだから、
どうしよう? って思うわけで。
中島
お腹に子どもがいて、
いつまで経っても生まれなかったらね。
糸井
うんうん。それは生む仕事だからでしょう。
人の作った歌を歌う仕事だったら、また違うんだろうね。
「もっとうまく歌えたはずだけど、もうダメだよ」
っていう時が、来ちゃうし。
でもみゆきさんのような仕事は、
先の時間について考えることってなかなか難しい。
年取っても難しいんだけれど、
若くても難しいんだよね。
中島
うん。明日のこと、わかんないもん。
糸井
僕は孫ができたせいで、
先に時間が流れるんだってことがわかって、
どこまで付き合えるんだろうっていうことが、
ちょっと、笑いを含めた面白さになった。
自分ひとりが100歳まで生きるにしても、
それはただの数字。
でも、1人の歩けない子どもには、
ああ、この先に時間があるんだなと思ったら‥‥。
中島
うんうんうん。
糸井
まだまだ「遠い」気がし始めるんですよね。
さっきの、『タグ・ボート』を幼稚園の子が歌ったら‥‥、
みたいなことを想像できるってこと自体、
自分がちょっと変わってきたんでしょう。
中島
なるほどね。それは精神衛生上、いいですね。
糸井
とてもいいですね。
中島
フフフ、うん。ワシら生(なま)もんだからねぇ。
糸井
‥‥こんどのツアーは「ラストツアー」なの?
中島
引退するって言ってるんじゃないですよ(笑)。
ラストコンサート、でもないんです。
ラストツアー。
いわゆるツアー形態というものを変える。
糸井
そのツアーって、全国を回ること?
中島
そうそう。
トラック並べてドーッと町から町へ、
1日ずついろんなとこを回っていく、
みたいなパターンは終わりにして、
例えばどこかの町で何日間とか、
そういうのならやっていく、っていうことです。
糸井
ああ。それは発明ですね。
中島
そうね、やめる人はきっぱりやめますもんね。
私、やめないんですよ、
しぶといから。ハハハハハハッ。
糸井
旅から旅、って言葉ではカッコいいけど、
くたびれるよねぇ。
中島
いろいろ大変です。
毎日ホールのつくりが変わっていきますからね。
糸井
お客の顔の見え方が毎日違うってすごいことですよ。
中島
うん、それは楽しいんですけどもね。
拍手のタイミングが地方で全然違うとか、
楽しい発見ですけれども。
糸井
でも、そんなに激しいツアーはやってきてないでしょう?
中島
そんなむちゃくちゃなのはやってないですね。
バンド系の男の子たちのような
乗り打ち(音楽業界用語で、移動後すぐ本番に入ったり、
本番後に移動したりというようなスケジュール)、
ああいうむちゃくちゃはやってないです。
糸井
あれはきっと若いミュージシャンの
通過儀礼なんじゃないかな。
これに耐えられないとダメだよ、みたいな。
中島
それこそ体力勝負、みたいな。
‥‥勝負じゃなくていいから。
違うとこで勝負するから(笑)。
糸井
それはスッキリした答えだね(笑)。
作ることもやめないわけだし、
何もやめてない。
リンゴの切り方を変えた、みたいなことだよね。
中島
そう、何もやめてないんですよ。
糸井
「なるようになるさ」
というところを持ってるわけだし。
なんか大雑把に楽しいね。
そういうふうに、形式を発明するって、
何かを変えますよ、
『夜会』だって、
あの形式を発明した(*)から
あんなことしてるわけでさ。
だから、変わるんじゃないですか、また。


2025-08-18 07:04:01
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*註
『夜会』(やかい)は脚本、演出、主演を
すべて中島みゆきが行なっている舞台。
コンサート、演劇、ミュージカル、
どれにも属さない「言葉の実験劇場」として
1989年にスタート、現在までに20作品、
通算489回の公演を行なってきた。
開始当時はすでに発表してきた曲を中心としていたが、
やがてオリジナルストーリー、オリジナル楽曲が増え、
ときにはほぼ全曲オリジナル曲で開催されることも。
2004年までは東京のみ、
2006年からは東京・大阪のみで、
1演目20公演から36公演と、
同じ場所で長期間開演するというスタイルをとっている。
最新作は2019年1月30日から2月27日まで開かれた
『夜会VOL.20 リトル・トーキョー』。


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