30 :乃絵と比吕美のあいだに 3:2008/03/26(水) 02:07:41 ID:5VPk525T
祭りの翌日、比吕美の姿は麦端高校の体育馆にあった。
たった一人、ジャージに着替える事もせず、ひたすらシュートを放ち続ける比吕美。
周りには何十个ものバスケットボールが転がり、比吕美のその行为が长时间に及んでいる事を示してた。
身体に充満した苛立ちを少しでも吐き出すため、比吕美はボールを放ち続ける。
(…………置いてかないで……)
気を缓めると、すぐに头に浮かんでしまう、その言叶…………
外见の鬼気迫る様子とは裏腹に、比吕美の精神は崩壊寸前だった。
麦端踊りの时に见せ付けられた、二人の気持ちの繋がり……
自分を置き去りにして、石动乃絵を追いかけていった眞一郎の姿……
乃絵は、自分と眞一郎が积み重ねてきた『时间』など、苦もなく飞び越えてしまった……
……そして、眞一郎も……
悲しみ、怒り、妬み……比吕美に内在する不の感情が溢れ出し、その手元を狂わせる。
もう何十本もシュートを打っているのに、リングを通过したのは、ほんの仅かだった。
…………
「全然ダメじゃん。フォームが目茶目茶……」
その声にハッと我に返る。入口に颜をしかめて腕组みしている朋与が立っていた。
「いつから居たの……全然気づかなかった」
「连続で五本はずして『クソッ』って毒づいた辺りから」
やれやれ、という风に軽く笑いながら、朋与は散乱したボールを片付け始める。
谁にも今の自分を见られたくない……そんな风に考えていたつもりだったが、
唐突に、自分の真意がそうではなかった事に気がつく比吕美。
体育馆にいれば朋与が来てくれる。无意识に、その事が分かっていたのかもしれない。
(朋与に讯いて欲しかった……私…朋与を待っていた……)
一通り片付けを终えると、朋与は无言で视线を向けてくる。比吕美が话し出すのを待っているようだった。
「昨日の麦端祭り……来ればよかったのに……面白いものが见れたよ……」
「?」
丑く歪む比吕美の口元。比吕美は自分で自分を笑っていた。
祭りでの出来事を、比吕美は朋与に话し始める。
踊りの前から眞一郎の様子がおかしかった事。石动乃絵に眞一郎との别れを恳愿した事。
麦端踊りの事。眞一郎がその时、谁の为に踊り、谁の为に舞ったか……気づいてしまった事……。
「……フラれちゃった……」
手にしたボールを构え、出鳕目なフォームでシュートする。当然のごとく、ボールはリングに掠りもしない。
「もう信じられないってこと?仲上くんのこと」
眞一郎を信じるとか、信じないとかではない。问题は自分自身……眞一郎に頼りきっている……自分の弱い心。
「私ね…こんな自分…嫌なの…………こんなの……もう……」
…………
暂しの沈黙の后、朋与はボールを手にした。
二、三度ドリブルの真似事をしてから、胸の前に构える。パスの合図だった。
比吕美が构えると、迷いの无いパスが一直线に飞んでくる。
(……朋与……)
素早く身体をバックボードへと向ける比吕美。
全身を一旦沈み込ませ、そして飞び上がる!膝から……そして左手は添えるだけ……!
フェイダウェイ気味に放たれるシュート。
そして……朋与の强い意志を载せたボールは、美しい弧を描いてリングへと吸い込まれていく。
シュッと心地いい音を立ててネットを通过すると、ボールはそのまま下に落下し、数度のバウンド経て动きを止めた。
静寂が访れるのを待って、朋与が口を开く。
「言うのよ比吕美。その口で。仲上くんに『好きだ』って」
朋与の态度は真剣を通り越して、もはや胁迫の域に达していた。
だが、そんな亲友の真挚な姿を见ても、比吕美はまだ逃げることを止められない。
「无駄よ……だって眞一郎くんは…」
「无駄でも言うのよ!じゃなきゃ変われない!!」
朋与は比吕美の胸仓に掴みかかった。
「アンタいつもそればっかり!自分の気持ちくらい……自分で决めてケリつけなよ!!」
怒りに任せて比吕美を突き放すと、朋与はその场から去っていく。
期待していた朋与の慰めを得られず、また一人になった比吕美は、ただその场に立ち尽くしてた。