他の星にいる知的生命体とどう接触するか。「ファーストコンタクト」と呼ばれる主題はSFに多いが、ポーランドの作家スタニスワフ・レムの古典的作品『ソラリス』が描く世界は壮大だ。地球より大きな惑星ソラリスを覆うゼリー状の海が、一つの生命体なのだ▼
宇宙服に身を包んだ人間が手を差し出すと、波はためらいながらもその手を包もうとする。意思があり、思考もしているように見える海。何とか交信できないかと人類は電子装置を沈めたり、X線で信号を送ったりする▼
きょうは海の日。地球の70%を覆う海は、太古から生命を育んできた。そんな海をときに擬人化したくなる。海が二酸化炭素を吸収し、温暖化を一定程度抑えてくれていると知ったときもそうだった▼
国立環境研究所によると、人間が毎年排出する二酸化炭素のうち2~3割が海に溶け込んでおり、一部は海藻などに吸収されている。もっともこのまま温暖化が進んで海水温が上がれば、吸収能力が落ちる恐れがあるという。海の包容力にも限度があるということか▼
現代文明は母なる大地そして母なる海を傷つけてきた。海洋に流れ出したプラスチックは細かな粒となって、魚たちの体内に蓄積される。レジ袋などを減らす動きは進むものの、いまだ小さな一歩に過ぎないのだろう▼
レムは『ソラリス』の物語を通じて、人間中心主義に懐疑を投げかけた。人間の理解を超えた「生きている海」に、どう歩み寄るか。必ずしも遠い惑星の話ではない。
宇宙服に身を包んだ人間が手を差し出すと、波はためらいながらもその手を包もうとする。意思があり、思考もしているように見える海。何とか交信できないかと人類は電子装置を沈めたり、X線で信号を送ったりする▼
きょうは海の日。地球の70%を覆う海は、太古から生命を育んできた。そんな海をときに擬人化したくなる。海が二酸化炭素を吸収し、温暖化を一定程度抑えてくれていると知ったときもそうだった▼
国立環境研究所によると、人間が毎年排出する二酸化炭素のうち2~3割が海に溶け込んでおり、一部は海藻などに吸収されている。もっともこのまま温暖化が進んで海水温が上がれば、吸収能力が落ちる恐れがあるという。海の包容力にも限度があるということか▼
現代文明は母なる大地そして母なる海を傷つけてきた。海洋に流れ出したプラスチックは細かな粒となって、魚たちの体内に蓄積される。レジ袋などを減らす動きは進むものの、いまだ小さな一歩に過ぎないのだろう▼
レムは『ソラリス』の物語を通じて、人間中心主義に懐疑を投げかけた。人間の理解を超えた「生きている海」に、どう歩み寄るか。必ずしも遠い惑星の話ではない。