〈庶民が苦しまず平穏に暮らし、幕府の仁政が庶民に行き届くように〉。「寛政の改革」で知られる松平定信は存命中、そんな願い事を自らしたためていた。自筆らしき「願文」が後に発見され、評伝にも収められている▼
寛政の改革と言えば、武士を借金苦から救う「棄捐(きえん)令」や、無宿人らに職業教育を施した「人足寄場(にんそくよせば)」が名高い。飢饉(ききん)に備えて村々の米穀の蓄えにも力を注いだ。毀誉褒貶(きよほうへん)はあるものの、弱者に寄り添う姿勢に限れば「仁政」と評すべきだろう▼
このごろの日本でとんと聞かなくなった言葉の代表格は、仁政かもしれない。たとえば菅義偉氏の場合、その政治手法が醸し出すものは、あくまで冷たく厳しい。かつては左遷人事で官界を掌握。首相の座に就くと、政権による無理難題の押しつけが次々に露見した▼
よりによって今回は、銀行や酒屋を脅して「自粛警察」を演じさせようとしたのだから始末に負えない。4度目の緊急事態宣言を宣言するや、お酒の提供を続ける飲食店を懲らしめる策に打って出た。「自分の手を汚さずに圧力をかけさせる気か」。憤る声が各方面から上がった▼
「聚斂之臣(しゅうれんのしん)」という言葉がある。重税を取り立てて民を苦しめる役人を指す。コロナで危機に直面した飲食店を、感染拡大の主犯かのように圧し続ける。やり口こそ違え、まるで聚斂ではないか▼
仁政ではなく圧政、徳治主義ではなく脅治主義とでも呼ぼうか。五輪の開幕が迫るにつれ、日ごと政権の馬脚が現れてきた気がする。
寛政の改革と言えば、武士を借金苦から救う「棄捐(きえん)令」や、無宿人らに職業教育を施した「人足寄場(にんそくよせば)」が名高い。飢饉(ききん)に備えて村々の米穀の蓄えにも力を注いだ。毀誉褒貶(きよほうへん)はあるものの、弱者に寄り添う姿勢に限れば「仁政」と評すべきだろう▼
このごろの日本でとんと聞かなくなった言葉の代表格は、仁政かもしれない。たとえば菅義偉氏の場合、その政治手法が醸し出すものは、あくまで冷たく厳しい。かつては左遷人事で官界を掌握。首相の座に就くと、政権による無理難題の押しつけが次々に露見した▼
よりによって今回は、銀行や酒屋を脅して「自粛警察」を演じさせようとしたのだから始末に負えない。4度目の緊急事態宣言を宣言するや、お酒の提供を続ける飲食店を懲らしめる策に打って出た。「自分の手を汚さずに圧力をかけさせる気か」。憤る声が各方面から上がった▼
「聚斂之臣(しゅうれんのしん)」という言葉がある。重税を取り立てて民を苦しめる役人を指す。コロナで危機に直面した飲食店を、感染拡大の主犯かのように圧し続ける。やり口こそ違え、まるで聚斂ではないか▼
仁政ではなく圧政、徳治主義ではなく脅治主義とでも呼ぼうか。五輪の開幕が迫るにつれ、日ごと政権の馬脚が現れてきた気がする。


