「…いいのか?」
自身を拘束していた縄を切った日下部篤也(くさかべあつや)に、パンダがいった。
「俺が助けたって言うんじゃねーぞ」
「オマエが捕まってんのは 夜蛾さんを誘い出すためだ」
「……
あの人には 恩があんだよ」
そういった日下部の脳裏に、昔のことが蘇る。
「本当にいいんだな」
車椅子に座った女性の横に立つ日下部に向かって、夜蛾がいった。
「コイツはオマエの甥ではない
甥の情報を持った何かだ」
「いつまでも死人に拘ってちゃ
未来を生きていけません っちゅー話ですよね でも」
「妹はもう
過去(タケル)が支えてくれなきゃ 生きて行けんのです」
「まさみち
あの人 僕のお母さんじゃない?」
夜蛾の後ろに隠れるように立っていたタケルが、車椅子に座った女性を見ていった。
「あぁ よく分かったな」
「へへへ そうじゃないかと思ったぜ」
「天才だろ?」
そういって、タケルが誇らしげな表情を浮かべたその時
車椅子に座った女性の脳裏に、一人の子供の姿が蘇った。
そして、そのまま車椅子から立ち上がり、タケルを抱きしめる。
「うぅ… う~
タケルぅ… タケルゥウ」
「日下部 悪いが」
「分かってます
完全自立型の呪骸の存在は公にできない」
「妹と一緒には暮らせない」
「すまん」
「何 謝ってんですか」
「ありがとうございます
本当に」
そういった日下部震える肩を見つめ、夜蛾もいった。
「ありがとう」