来るやいなや暴言を飛ばした九空は、車から出てきて俺の隣に座った。お風呂上がりだからか、揺れる髪の毛からかすかなシャンプーの香りが鼻を打つ。
「何が待てよ」
そう言いながら顔を押し込む。顔と顔がかなり密着する。少しでも動いたら、唇があたりそうなほどの近さ。いや、その前に鼻があたるだろうが。
「いや、本当、待って……」
「また、待って?おじさん、それしか言えないの?ばかばか言ってたら、本当にばかになっちゃったの?」
「そうじゃなくて、近すぎるだろ!」
唇がいつもと違う。濃い口紅を塗ったわけではなさそうだが、ひときわチェリーピンクのような色が目に留まった。
「会いたかったんでしょ?だから見せてあげてるのよ?5分間好きなだけ見なさい!どう?私の顔は」
「いや、まあ、可愛い……」
「当然でしょ!」
顔は目の前。唇はぷるぷる。
あの唇を奪いたいという感情がむずむずと湧いてくるが、今はもっと重要なものがある。
会いたいとは言ったが、そうかといってあまりに忠実にそれを実行している九空の肩をつかんで距離を広げた。
「おじさん。会いたいっていうから見せてあげてるのに、よくものけたわね?」
約2秒前までは笑っていたくせに、一瞬で眉をつり上げて聞いてきた。
「実は、この手に会いたかったんだ」
俺は九空の手をつかみ上げた。
「手?」
何をそんなたわごとを言っているんだという顔で俺を見る九空。つり上がった眉に疑問の意が込められている。
[国産車を購入しますか?]
しかし、今がチャンスだ。
うかうかと手を振り切らずにいる今が!
急いで購入ウィンドウを浮かべた。
いや、国産車ではなく。
外車だ!
お金には限りがある。
とにかくこうなったからには[外車]から挑戦してみるのも悪くはない。
そこで、[購入ウィンドウ]を変えた。
今まで聞いたことと経験したことをもとに解釈すると、国産車はおそらく国内級のアイテム。
そして、外車ということは世界級のアイテムではないだろうか。
だから、せっかく九空の気運をもらうなら!
[外車を購入しますか?]
購入ウィンドウをすぐに変えて、九空と恋人つなぎをしたまま購入ウィンドウにぽんっと触れた。
九空が正気を取り戻したら面倒だから、ぼけっとしている間に全てのことを終わらせなければならない。
[外車]
[アイテムガチャ!!]
[タッチするとランダムにアイテムガチャが始まります。]
[幸運を祈ります。]
国産車の時と同じようなメッセージが現れた。
リロピロリロピロリロピロリロピロリ~!!
アイテムガチャの結果は~!
[リセット]を獲得しました!
何のアイテムかはわからないが、ハズレではなかった。
ハズレじゃないというのが重要だ!
やっぱり黄金の手。
なんと5千万円だ。
5千万円のハズレが出たら、それこそ気が狂って穴を掘って入るほどの衝撃を受けるだろうから。
それなら、こうしてる場合ではない。
ただ、偶然に1回でガチャが成功したのかもしれないが、
これが九空の加護なら、今後も利用していかなくては。
すぐに[国産車]に挑戦した。まだ、国産車をちょうど2回試せるだけのお金があるから。
今回の結果を見ると、九空の気運というものが本当にあるのかも確認できるし。
[国産車を購入しますか?]
同様のメッセージが現れて、ピロリロピ~と苛立つメッセージも続いた。
[強化セット]を獲得しました!
驚くことにも、出てきた結果はまたも当たりだった。
ハズレがない。ハズレが!
それなら、もう1回!
もう一度、国産車の購入ウィンドウを浮かべて九空の手でタッチした。
[黒いボール]を獲得しました!
今回もアイテムが現れた!
3回試して3回とも当たり。
過去の記憶を思い出すと、3回試して1回当たるかだったから猟奇的な結果だ。
あんなによく出ていたハズレが100パーセントの確率で出ないなんて。
こういうことなら、もっと試してみたいが、
外車5千万円。国産車2回。さっきのハズレまで合わせたら3回。
持ち金に限界がきた。いくらなんでも、2千万円以上は残しておくべきだから。
「おじさん……」
わけのわからないしぐさに、九空がついに我に返って手を振り切ると、いきなり立ち上がって俺を睨みつけた。
「一体何をしてるの?」
すぐに納得させないと無事では済ませないという表情だ。
「お前の手はやっぱり偉大だ!」
「偉大?」
「やっぱりお前はすごい存在ってこと!」
怒っていようが関係なく、俺は九空の偉大さに感動しすぎて彼女の体をぐいっと抱き寄せた。華奢な体が俺の胸に抱かれる。
華奢なくせに胸が存在感を誇る。
そんな状態が約2分も続いた。九空を抱きしめていると、何だか感情が豊かになって、離したくないというか。
九空もただ俺に抱かれていた。
ただ、慌てたのか、すぐに反応が返ってきた。激しい反応が。
「おじさん……。私がすごいのは当然だけど……」
ドスッ!
抱かれた状態で、廃家での時のように俺の急所を膝蹴りしてきた。
確かにあの時のように強くは蹴っていない。
しかし、急所は急所だ!
耐えられない痛みが脳を刺激して、俺はそのまま膝から崩れ落ちた。
「急に抱きしめないで。びっくりしたじゃない!」
「だ、だからって……。そ、それなら口で言えよな、普通あそこを蹴るかよ。ううっ。そ、それに何でそんなに顔が赤くなってんだ?意味ないんだろ?」
「顔が赤いって、だ、誰がよ!」
九空はそう言うと俺に背を向けた。何だか自分を落ち着かせているように見えたが、再びこっちを向いて俺を見つめる。
ようやく痛みが消え、やっとのことで立ち上がって再び詰った。
「この間キスした時は何の反応もなかったのに、抱きしめたくらいであそこを蹴るかよ!」
「あの時は、あの女が見てたから。おじさんは私のものってことを見せつけるために見逃してあげただけ。でも、全く心の準備ができてない状態ではだめよ!心臓が痛くなるからね!ドキドキするって言ったでしょ!」
「それは……」
「それは何よ!」
「何でもない」
そのドキドキするってやつだけど、
どう考えても、胸がときめいてるのではないかという推測ができるが。
俺のせいで胸がときめくなんて、それはあまりにもオーバーか?
この女のことだから一般的な推測は意味がないというのが、俺の心の中の衆論だ。
「フフッ。おじさん、調子に乗り過ぎよ。偉大だ何だってごまかさないで。一体、私の手で何をしたの?」
やはり聞き逃さずに、その部分を問い詰める。だから、本当の理由を説明した。
説明できないこともないから。
「いや、それは……お前の手の気運を少しもらおうと思ったんだ。お前の財物運の気運をもらえば、少しは物事がうまくいくかなと思って」
「私の気運?」
「うん」
「おじさん、ばかなの?」
九空は首を横に振ると、俺の方に近づいて来た。
「おじさんに運がないだなんて。私をこうして呼び出して、抱きしめて、それでも生きていられる人なのに?お祖父さんは私を呼び出せるけど、抱きしめたりはしない。わかった?それを両方ともできる唯一の人がまさにおじさんなのよ。ばかね」
いや、抱きしめたことで2世を残せないところでしたが?
九空にあらゆるスキンシップをとっても生きているという観点から見れば、運が良いということは認めるが。
そのような観点で運が良いのかも微妙だが。
いやいや。
それとガチャ運は別だ。
お金に関する幸運を全て持ている九空の気運とは全く違うということ。
実際に彼女の手は奇跡を起こした。
「10分も過ぎた。はぁー。私もばかね。もう行くわ!」
その状態でクールに背を向けて車に向かった。
「そ、そうか。じゃあな」
九空は俺のあいさつを無視して車に入って行った。
すると、しばらくして車の窓を開けて言う。
「忙しいから、連絡、し、な、い、で、ね?」
その言葉と同時に車が出発して、九空は消えた。
言葉を1文字ずつ強調して消えたのが少し気にかかるが。
「うーん」
何はともかく、九空の手がとんでもない奇跡を起こしたから、今夜はただ崇拝したい気分だった。
だから、その良い気分を秘めたまま、手に入れたアイテムでも見てみるか。
獲得したアイテムを確認するために、ウィンドウを読み込んだ。
まずは、[リセット]だ。
[リセット]
[サーバー級アイテム。]
[1度に限り、望むものを1つリセットできる。それがどんなものか、どんな状況かに関わらず。]
リセットできるだと?
じゃあ、[残り時間]も?
それはやばくないか?
[残り時間]もいいが、それよりも切実な状況があるとして、そこに使うこともありそうだ。どんな状況でも、どんな存在でもリセットできるのなら。
思ったよりとんでもないアイテムのようだ。
言葉どおり、ゲームの管理者が使えるアイテム。
サーバー級アイテムとは、おそらくそういう意味だろう。
[外車]は、まさにこういうサーバー管理者級アイテムが出てくるガチャなのか?
そういうことなら、確かに5千万円の値打ちはある。
もちろん、ハズレが出たら5千万円が1億円になって、またハズレが出たら1億5千万円のアイテムになれるかもしれないやつだが。
だから、九空が必要で。
早くクリアしたければこの[外車]を積極的に利用すべきだという助言が確かに証明された瞬間。
経験者の助言はこんなにも重要だ。
そうでなければ、3億円ほどを集めない限り[外車]を購入しようとは思いもしなかっただろうから。
まだ、終わりではない。アイテムはあと2つもある。
[強化セット]
[金額や制限に関係なく強化が可能である。]
[回数は3回。]
[ただし、強化費用が高いほど強化に失敗する場合もある。]
確かに、8百万円で手に入れたものにしては、かなりのコスパを誇るアイテム。
[無形剣]のその高い強化費用をカバーできるアイテムだ。
待てよ?無形剣の強化だけじゃなく、体力や魅力の強化も可能なのでは?
問題は、また九空が必要ってこと。
くそっ。
アイテムから確認して、もう少ししがみついておくんだった。
最後の文章のせいで、これはひとまず保留だ。今度会ったら、また急所を蹴られようが、しがみついて強化をしてみよう。
次は、[黒いボール]だった。
[黒いボール]
[黒いボールだ。中に入ることができる。太陽に投げられても耐えられる。]
[ただし、ボールに触れなければならない。触れられなかった黒いボールは、触れるまで再使用不可。]
[誰かと接触した状態ではその人も一緒に中に入ってしまう。]
当てたアイテムの中で1番わけのわからないアイテムだった。
回数制限はない。
じゃあ、試してみるか。
[黒いボールを使用しますか?]
ゴロゴロゴロ。
すると、黒い小さなボールが現れた。
俺の足の下に転がる。
その黒いボールを足で触れた瞬間。
体が黒いボールに吸い込まれてしまった。
「ううっ」
とても狭い。動くことすらできない黒い何かに詰め込まれた状態になった。
[アイテムを使用することができません。]
[黒いボール発動中。]
[解除しますか?]
だから。身動きもとれずにしゃがみこみ、黒いボールの中に吸い込まれたこの状態では、どんな攻撃からも持ち堪えることができるということだが。
何だか微妙だ。
使用した状態で無敵になって突進できるわけでもなく。
言葉どおり、俺の体の防御用だが。
[無形剣]のようなものか?いや、突進の可能性を捨てると[無形剣]とは比べ物にならない。
解除して出てきた。
まあ、危急の状態では使えそうだが、わざわざ?
今の状況では強化セットが1番良いアイテムだ。
無形剣の強化が手軽にできる!
さらに、このようなアイテムを見ていたら、1つ可能性が浮かび上がった。
氷上の剣。
あれ、確か師匠にもらったとか言ってたよな?
じゃあ、あの剣はアイテムではないのか?
[国産車] ガチャで手に入れたアイテムを弟子に与えたのなら?
十分にあり得る。そうなると、あの剣はやはりただの剣ではないということになる。
銃弾も切り裂けるのでは?
氷上が九空に殺されるかもしれないという心配は本当に無用ということだが。
彼女の師匠の正体が正体だからな。
とにかく[セーブ]から済ませた。かなりの金額を使ったから、当然のことだ。
そうして、帰ろうとしたところ。まさにその瞬間!
ドッカァァァーン!
繁華街の奥の方の1棟のビルで最上階から下の階まで、まるでドミノのように連鎖爆発が起き、窓が粉砕されて炎が立ち上り始めた。
その爆発を見たら、さっき昼間見たニュースが脳裏を掠めた。
とりあず、行ってみるか?
これまでは、あまりに高い難易度は避けてきたが、今はB級くらいの攻略が必要な状況。
攻略と関係があってもなくても。
攻略対象を探せていない状況だから、行ってみて悪いことはない。
昼間は自分と関係がないと思っていたが、ゲームの世界で起こることだから念のために。
「何が待てよ」
そう言いながら顔を押し込む。顔と顔がかなり密着する。少しでも動いたら、唇があたりそうなほどの近さ。いや、その前に鼻があたるだろうが。
「いや、本当、待って……」
「また、待って?おじさん、それしか言えないの?ばかばか言ってたら、本当にばかになっちゃったの?」
「そうじゃなくて、近すぎるだろ!」
唇がいつもと違う。濃い口紅を塗ったわけではなさそうだが、ひときわチェリーピンクのような色が目に留まった。
「会いたかったんでしょ?だから見せてあげてるのよ?5分間好きなだけ見なさい!どう?私の顔は」
「いや、まあ、可愛い……」
「当然でしょ!」
顔は目の前。唇はぷるぷる。
あの唇を奪いたいという感情がむずむずと湧いてくるが、今はもっと重要なものがある。
会いたいとは言ったが、そうかといってあまりに忠実にそれを実行している九空の肩をつかんで距離を広げた。
「おじさん。会いたいっていうから見せてあげてるのに、よくものけたわね?」
約2秒前までは笑っていたくせに、一瞬で眉をつり上げて聞いてきた。
「実は、この手に会いたかったんだ」
俺は九空の手をつかみ上げた。
「手?」
何をそんなたわごとを言っているんだという顔で俺を見る九空。つり上がった眉に疑問の意が込められている。
[国産車を購入しますか?]
しかし、今がチャンスだ。
うかうかと手を振り切らずにいる今が!
急いで購入ウィンドウを浮かべた。
いや、国産車ではなく。
外車だ!
お金には限りがある。
とにかくこうなったからには[外車]から挑戦してみるのも悪くはない。
そこで、[購入ウィンドウ]を変えた。
今まで聞いたことと経験したことをもとに解釈すると、国産車はおそらく国内級のアイテム。
そして、外車ということは世界級のアイテムではないだろうか。
だから、せっかく九空の気運をもらうなら!
[外車を購入しますか?]
購入ウィンドウをすぐに変えて、九空と恋人つなぎをしたまま購入ウィンドウにぽんっと触れた。
九空が正気を取り戻したら面倒だから、ぼけっとしている間に全てのことを終わらせなければならない。
[外車]
[アイテムガチャ!!]
[タッチするとランダムにアイテムガチャが始まります。]
[幸運を祈ります。]
国産車の時と同じようなメッセージが現れた。
リロピロリロピロリロピロリロピロリ~!!
アイテムガチャの結果は~!
[リセット]を獲得しました!
何のアイテムかはわからないが、ハズレではなかった。
ハズレじゃないというのが重要だ!
やっぱり黄金の手。
なんと5千万円だ。
5千万円のハズレが出たら、それこそ気が狂って穴を掘って入るほどの衝撃を受けるだろうから。
それなら、こうしてる場合ではない。
ただ、偶然に1回でガチャが成功したのかもしれないが、
これが九空の加護なら、今後も利用していかなくては。
すぐに[国産車]に挑戦した。まだ、国産車をちょうど2回試せるだけのお金があるから。
今回の結果を見ると、九空の気運というものが本当にあるのかも確認できるし。
[国産車を購入しますか?]
同様のメッセージが現れて、ピロリロピ~と苛立つメッセージも続いた。
[強化セット]を獲得しました!
驚くことにも、出てきた結果はまたも当たりだった。
ハズレがない。ハズレが!
それなら、もう1回!
もう一度、国産車の購入ウィンドウを浮かべて九空の手でタッチした。
[黒いボール]を獲得しました!
今回もアイテムが現れた!
3回試して3回とも当たり。
過去の記憶を思い出すと、3回試して1回当たるかだったから猟奇的な結果だ。
あんなによく出ていたハズレが100パーセントの確率で出ないなんて。
こういうことなら、もっと試してみたいが、
外車5千万円。国産車2回。さっきのハズレまで合わせたら3回。
持ち金に限界がきた。いくらなんでも、2千万円以上は残しておくべきだから。
「おじさん……」
わけのわからないしぐさに、九空がついに我に返って手を振り切ると、いきなり立ち上がって俺を睨みつけた。
「一体何をしてるの?」
すぐに納得させないと無事では済ませないという表情だ。
「お前の手はやっぱり偉大だ!」
「偉大?」
「やっぱりお前はすごい存在ってこと!」
怒っていようが関係なく、俺は九空の偉大さに感動しすぎて彼女の体をぐいっと抱き寄せた。華奢な体が俺の胸に抱かれる。
華奢なくせに胸が存在感を誇る。
そんな状態が約2分も続いた。九空を抱きしめていると、何だか感情が豊かになって、離したくないというか。
九空もただ俺に抱かれていた。
ただ、慌てたのか、すぐに反応が返ってきた。激しい反応が。
「おじさん……。私がすごいのは当然だけど……」
ドスッ!
抱かれた状態で、廃家での時のように俺の急所を膝蹴りしてきた。
確かにあの時のように強くは蹴っていない。
しかし、急所は急所だ!
耐えられない痛みが脳を刺激して、俺はそのまま膝から崩れ落ちた。
「急に抱きしめないで。びっくりしたじゃない!」
「だ、だからって……。そ、それなら口で言えよな、普通あそこを蹴るかよ。ううっ。そ、それに何でそんなに顔が赤くなってんだ?意味ないんだろ?」
「顔が赤いって、だ、誰がよ!」
九空はそう言うと俺に背を向けた。何だか自分を落ち着かせているように見えたが、再びこっちを向いて俺を見つめる。
ようやく痛みが消え、やっとのことで立ち上がって再び詰った。
「この間キスした時は何の反応もなかったのに、抱きしめたくらいであそこを蹴るかよ!」
「あの時は、あの女が見てたから。おじさんは私のものってことを見せつけるために見逃してあげただけ。でも、全く心の準備ができてない状態ではだめよ!心臓が痛くなるからね!ドキドキするって言ったでしょ!」
「それは……」
「それは何よ!」
「何でもない」
そのドキドキするってやつだけど、
どう考えても、胸がときめいてるのではないかという推測ができるが。
俺のせいで胸がときめくなんて、それはあまりにもオーバーか?
この女のことだから一般的な推測は意味がないというのが、俺の心の中の衆論だ。
「フフッ。おじさん、調子に乗り過ぎよ。偉大だ何だってごまかさないで。一体、私の手で何をしたの?」
やはり聞き逃さずに、その部分を問い詰める。だから、本当の理由を説明した。
説明できないこともないから。
「いや、それは……お前の手の気運を少しもらおうと思ったんだ。お前の財物運の気運をもらえば、少しは物事がうまくいくかなと思って」
「私の気運?」
「うん」
「おじさん、ばかなの?」
九空は首を横に振ると、俺の方に近づいて来た。
「おじさんに運がないだなんて。私をこうして呼び出して、抱きしめて、それでも生きていられる人なのに?お祖父さんは私を呼び出せるけど、抱きしめたりはしない。わかった?それを両方ともできる唯一の人がまさにおじさんなのよ。ばかね」
いや、抱きしめたことで2世を残せないところでしたが?
九空にあらゆるスキンシップをとっても生きているという観点から見れば、運が良いということは認めるが。
そのような観点で運が良いのかも微妙だが。
いやいや。
それとガチャ運は別だ。
お金に関する幸運を全て持ている九空の気運とは全く違うということ。
実際に彼女の手は奇跡を起こした。
「10分も過ぎた。はぁー。私もばかね。もう行くわ!」
その状態でクールに背を向けて車に向かった。
「そ、そうか。じゃあな」
九空は俺のあいさつを無視して車に入って行った。
すると、しばらくして車の窓を開けて言う。
「忙しいから、連絡、し、な、い、で、ね?」
その言葉と同時に車が出発して、九空は消えた。
言葉を1文字ずつ強調して消えたのが少し気にかかるが。
「うーん」
何はともかく、九空の手がとんでもない奇跡を起こしたから、今夜はただ崇拝したい気分だった。
だから、その良い気分を秘めたまま、手に入れたアイテムでも見てみるか。
獲得したアイテムを確認するために、ウィンドウを読み込んだ。
まずは、[リセット]だ。
[リセット]
[サーバー級アイテム。]
[1度に限り、望むものを1つリセットできる。それがどんなものか、どんな状況かに関わらず。]
リセットできるだと?
じゃあ、[残り時間]も?
それはやばくないか?
[残り時間]もいいが、それよりも切実な状況があるとして、そこに使うこともありそうだ。どんな状況でも、どんな存在でもリセットできるのなら。
思ったよりとんでもないアイテムのようだ。
言葉どおり、ゲームの管理者が使えるアイテム。
サーバー級アイテムとは、おそらくそういう意味だろう。
[外車]は、まさにこういうサーバー管理者級アイテムが出てくるガチャなのか?
そういうことなら、確かに5千万円の値打ちはある。
もちろん、ハズレが出たら5千万円が1億円になって、またハズレが出たら1億5千万円のアイテムになれるかもしれないやつだが。
だから、九空が必要で。
早くクリアしたければこの[外車]を積極的に利用すべきだという助言が確かに証明された瞬間。
経験者の助言はこんなにも重要だ。
そうでなければ、3億円ほどを集めない限り[外車]を購入しようとは思いもしなかっただろうから。
まだ、終わりではない。アイテムはあと2つもある。
[強化セット]
[金額や制限に関係なく強化が可能である。]
[回数は3回。]
[ただし、強化費用が高いほど強化に失敗する場合もある。]
確かに、8百万円で手に入れたものにしては、かなりのコスパを誇るアイテム。
[無形剣]のその高い強化費用をカバーできるアイテムだ。
待てよ?無形剣の強化だけじゃなく、体力や魅力の強化も可能なのでは?
問題は、また九空が必要ってこと。
くそっ。
アイテムから確認して、もう少ししがみついておくんだった。
最後の文章のせいで、これはひとまず保留だ。今度会ったら、また急所を蹴られようが、しがみついて強化をしてみよう。
次は、[黒いボール]だった。
[黒いボール]
[黒いボールだ。中に入ることができる。太陽に投げられても耐えられる。]
[ただし、ボールに触れなければならない。触れられなかった黒いボールは、触れるまで再使用不可。]
[誰かと接触した状態ではその人も一緒に中に入ってしまう。]
当てたアイテムの中で1番わけのわからないアイテムだった。
回数制限はない。
じゃあ、試してみるか。
[黒いボールを使用しますか?]
ゴロゴロゴロ。
すると、黒い小さなボールが現れた。
俺の足の下に転がる。
その黒いボールを足で触れた瞬間。
体が黒いボールに吸い込まれてしまった。
「ううっ」
とても狭い。動くことすらできない黒い何かに詰め込まれた状態になった。
[アイテムを使用することができません。]
[黒いボール発動中。]
[解除しますか?]
だから。身動きもとれずにしゃがみこみ、黒いボールの中に吸い込まれたこの状態では、どんな攻撃からも持ち堪えることができるということだが。
何だか微妙だ。
使用した状態で無敵になって突進できるわけでもなく。
言葉どおり、俺の体の防御用だが。
[無形剣]のようなものか?いや、突進の可能性を捨てると[無形剣]とは比べ物にならない。
解除して出てきた。
まあ、危急の状態では使えそうだが、わざわざ?
今の状況では強化セットが1番良いアイテムだ。
無形剣の強化が手軽にできる!
さらに、このようなアイテムを見ていたら、1つ可能性が浮かび上がった。
氷上の剣。
あれ、確か師匠にもらったとか言ってたよな?
じゃあ、あの剣はアイテムではないのか?
[国産車] ガチャで手に入れたアイテムを弟子に与えたのなら?
十分にあり得る。そうなると、あの剣はやはりただの剣ではないということになる。
銃弾も切り裂けるのでは?
氷上が九空に殺されるかもしれないという心配は本当に無用ということだが。
彼女の師匠の正体が正体だからな。
とにかく[セーブ]から済ませた。かなりの金額を使ったから、当然のことだ。
そうして、帰ろうとしたところ。まさにその瞬間!
ドッカァァァーン!
繁華街の奥の方の1棟のビルで最上階から下の階まで、まるでドミノのように連鎖爆発が起き、窓が粉砕されて炎が立ち上り始めた。
その爆発を見たら、さっき昼間見たニュースが脳裏を掠めた。
とりあず、行ってみるか?
これまでは、あまりに高い難易度は避けてきたが、今はB級くらいの攻略が必要な状況。
攻略と関係があってもなくても。
攻略対象を探せていない状況だから、行ってみて悪いことはない。
昼間は自分と関係がないと思っていたが、ゲームの世界で起こることだから念のために。









