暗夜(やみよ)に,二人の若い男が,こそこそ话しております。
「今夜(こんや)は,真っ暗(まっくら)やみだから,隣りの柿を盗もうじゃないか。」
「うん,それじゃあ,おれが木に登って,棒(ぼう)で叩(たた)き落とすから,お前は,下で拾(ひろ)ってくれ。」
相谈(そうだん)が缠(まと)まると,早速(さっそく),一人の男が木に登り,棒で叩きますと,柿はごろごろ落ちてきます。
下で拾(ひろ)う役(やく)の男は,慌てて拾い始めましたが,あんまり慌てたので,深い沟(どぶ)の中に落ちてしまい,上がれません。
「おーい,落ちた落ちた。」
沟に落ちた男が騒(さわ)ぐと,
「落ちるはずだよ。叩いてるんだから……。」
「いやいや、落ちた落ちた。」
「当り前(あたりまえ)だ。早く,拾え。」
「违(ちが)う。沟に落ちたんだ。」
すると,木の上の男,
「沟に落ちたのは,舍(す)てておけ。」