
「マックス!」
「あっ!ママ、ダディ!」
ニューヨークにやってきたタカオ达、BBAチーム。
今回はヒロミも一绪だ。
母と父の姿を见つけたマックスは、すぐさま両亲の元に駆け寄った。
「会いたかったヨ!ママ、ダディ!」
「私たちもよ。指折り数えてあなたが来る日を待っていたんだから!」
「しかし、少し见ないうちに大きくなったなあ。」
その様子を见ていたヒロミが、微笑ましげにつぶやいた。
「ヘェ、マックスの家って案外円満なご家庭なのね。」
「ええ、そうなんですよ。でも、いいですねぇ。
私の家は母上も父上も忙しくて、マックスみたいに
家族みんなで、あんな风にしたことがあんまりないんです。」
「うん、あたしもね、ママは普段いるんだけど、
パパが帰り遅いから家族みんな一绪の时は灭多にないわ。」
すると、その言叶にタカオが眉を吊り上げる。
「なに言ってんだよ、お前ら!
二人とも父ちゃんも母ちゃんもいるのに、そんなこと言うなんて赘沢だぞ!
俺なんて母さん小さい顷に死んでいないし、
カイだって父ちゃんと离ればなれなんだからな!」
タカオの言叶にえっ、とヒロミが声を上げた。
「それって本当なの?カイ。」
「ああ、三年前にな。
今は、祖父と母の三人だが、母はろくな奴じゃない。」
するとカイの头に丸めたボール纸が飞んで直撃した。
投げたのはもちろんマックスである。
「カイ、ママのこと、悪く言うなんてボク、许せないネ!」
マックスは、ほっぺたをふくらませた。
カイはマックスに锐い眼差しを向ける。一触即発の雰囲気。
「まあまあ、カイ。
マックスが母亲を大事にしていることは、お前も承知の上だろう?
だから谢ってやったらどうだ?・・・な?」
横から入ったレイが悬命にカイを说得する。
レイのひたむきな态度にカイも渋々ながら头を下げた。
レイはほっ、と安堵の息をカイの横で漏らす。
だが、レイの安堵の表情が、しだいに忧いを帯びた表情になっていった。
(えっ・・・?)
慌てて目をこするマックス。
しかしレイの表情はいつもと同じ、快活な笑颜の表情だった。
さっきのは错覚だったのか?そう思えてしまうほどだった。
「さあ、それじゃあ、研究所に向かいましょう!」
ジュディ局长は嬉しそうに言った。
「ふーん、じゃあマックスはこっちで暮らしていたこともあるんだ。」
「うん!もちろん日本で家族で暮らしてたこともあるネ。」
バスの中で弾む楽しげな会话。
话题は家族のことだった。
话の轮の中には普段、会话に加わろうとしないカイさえも加わっている。
「それじゃあ、カイの颜のペイントはお父上と别れたときに・・・!?」
「ああ、・・・まあ、自分を変えたい、といった考えもあっての事だがな。」
「てことは、もし、カイが父ちゃんと别れていなかったら、
今と违って、もうちょっとかわいげのある性格になってたってわけだ。
俺は爱想のいいカイの方が良かったな。」
わざとらしくため息を吐いたタカオに、カイ以外のみんなが愉快そうに笑い出した。
「でもぉ、あたしは爱想の良いカイなんて想像できないな。
レイもそう思うでしょ?」
振り返りながらレイに话しかけるヒロミ。
しかし、レイは答えない。
ヒロミの声など闻こえていないように、窓の外の景色をぼんやりと眺めている。
「レイ!?」
「レイってば!」
三度目の呼びかけで、レイはやっと呼ばれていたのに気がついたように颜を上げた。
「えっ・・・?よ、呼んだか?」
「もう三回くらい呼びましたよ。どうかしたんですか、レイ?」
レイはその答えに苦笑いして言った。
「いや、何でもない。・・・少し、寝ぼけてたみたいだ。」
「あはははは、そういやレイ、飞行机ん中でもずっと寝てたもんな~。」
タカオの指摘に、レイもみんなと一绪になって笑い出す。
(なんか、违うネ・・・。)
マックスは心の中でつぶやいた。
さっき空港で见せた表情もそうだったが、
レイの笑颜はなんだか无理をしているように见えた。
少なくとも、疲れがたまっているとかそういう様子ではない。
そう言えば、レイは今も空港でも话の轮に入っていなかった。
レイの家族のこと、そのことが今までレイの口から语られたことは一度もない。
「ねぇ、レイ・・・。」
「ん?どうした、マックス?」
マックスは意を决して问いかけた。
「レイの、ママとパパって、どんなヒト?」
その言叶にレイが锐く反応する。
そしてその眼は动揺して揺れていた。
-キィィィィィ!
バスがちょうど研究所に到着し、停车した。
「さぁ、ついたわよ。荷物、忘れないようにね。」
ジュディのその一言で话は终わりとなった。
・・・・・しかし、最后までバスの中に残っていたレイが一人、
ため息を吐いたことに谁も気がつかなかった。
その晩、マックスはなかなか寝付けなかった。
侧で寝ているタカオのいびきがうるさいとか、
隣の部屋で寝ているヒロミの壁を蹴る音が気になるとか、そういった问题じゃない。
(レイ・・・、一体どうしちゃったネ・・・。)
いつも気丈で、强くて、贤くて、しっかりしていて、困ったときにはいつも助けてくれる。
マックスにとって兄のような存在である金・李。
彼が昼间、あんな悲しそうな表情をしたのを见たのは初めてだった。
そしてマックスが、彼に家族のことを闻いたときの目はとても悲しい目をしていた。
(何か、あったのかナ・・・?)
マックスは大きく首を振って迷いをうち消そうとした。
しかし、そんなことをしても思いは消えない。
気分転换にマックスはそっと部屋を抜け出した。
行く场所は决まっている。
研究所の屋上だ。
気分の优れないとき、一人でいたいような気分の时、マックスはよく屋上に行ったものだった。
そんなときはいつも决まってレイがマックスの侧にいて、マックスが落ち着くまで慰めてくれた。
(ダメダメ!いつもレイばっかりに頼っちゃダメね!)
マックスは头を振ると、重たいドアをゆっくりと开けた。
だが、屋上には先客がいた。
「れ、レイ・・・?」
「なんだ、マックス。お前も来たのか。」
そう言って微笑んだのはレイだった。
「なんでこんな所にいるネ!?」
「なんでって、ちょっと寝苦しくてな。夕凉みに来てみたんだ。」
レイはネオンを见下ろした。
その表情は普段と変わりない。
・・・でも、マックスは何となくレイをそのままにしておけなかった。
それに二人きりでいるのは、昼间の答えを闻く绝好のチャンスだった。
「レイ、・・・昼间の、続きなんだけど・・・。」
するとレイはびくっと体を引きつらせた。
「あのネ、ボク、なにもレイのコト・・・、」
「気を遣わなくていいよ、マックス。」
ふうっ、とため息を吐いたレイはマックスに座れよ、と身振りで示した。
マックスはその场に腰を下ろす。
「変だよな、今までに俺だけ家族のことをみんなに话したりしないなんて、
マックスが不思议に思っても仕方ないよな。
まあ、俺の家の问题もあるんだけど・・・。」
「レイの家?」
マックスは首を倾げた。
「俺の家、金家は村が出来たときからある古い家系なんだ。
それに初代族长も金家の者だった。
昔から武芸に优れた家系だったんだ。」
朗々と诗でも语るように话すレイ。
知识が豊富だと言うことが话し方にも表れている。
「でも、金家は俺の祖父の代に一度、势いが衰えた。
迹継ぎがみんな次々死んでいったから、
金家はなくなるんじゃないかって心配されたほどだ。でも・・・」
「でも・・・、どうなったノ?」
先が知りたくてレイを急かすマックス。
レイはゆっくりと口を开いた。
「母の命を代偿に、金家の嫡子、俺が生まれたんだ。」
マックスは绝句した。
レイはうつむいたまま続けた。
「父は母が命を赌して产んだ俺に李と名付けた。
昔から中国や日本では、男に女の名を付けると丈夫に育つと言われている。
父はその迷信にあやかって俺をそう名付けた。」
「じゃあ、レイのママは・・・もう、いないノ?」
レイはその言叶にうなずいた。
「母は、俺を产み落とすと同时に产が重くて亡くなった。
だから、俺は母の颜すら知らない。」
そっと夜空を眺めるレイ。
その目はどこか远くのものでも见るような眼差しだった。
「でも、レイのパパはレイのコト、かわいがってくれたんでショ!?
だってたった一人の息子なんだシ!」
「父が俺をかわいがる?本気でそう思っているのか?マックス。」
レイは笑みを浮かべた。
しかし、その笑みは自嘲的な笑みだった。
「金家が衰えているときに?マックス、大违いだ。
むしろ逆だ。父は母がいない分、俺を锻え上げた。
それこそやっと両足で立てるようになった顷から俺は父に武术を仕込まれ、
そして三つの时に老师のいる戦士の村に入れられた。」
普通、戦士の村に子供を入れるのは子供が5・6歳の时。
レイの场合は间违いなく、异例だったといえるだろう。
「・・・厳しい父亲だった。
村に行った后は便りもよこしてくれなかったし、会いにさえ来てくれなかった。」
レイの脳裏に父亲と过ごした日の事が、走马灯のようによみがえっていった。
「爱してくれないんじゃないか、そう思えて、・・・仕方なかった。」I
「あっ!ママ、ダディ!」
ニューヨークにやってきたタカオ达、BBAチーム。
今回はヒロミも一绪だ。
母と父の姿を见つけたマックスは、すぐさま両亲の元に駆け寄った。
「会いたかったヨ!ママ、ダディ!」
「私たちもよ。指折り数えてあなたが来る日を待っていたんだから!」
「しかし、少し见ないうちに大きくなったなあ。」
その様子を见ていたヒロミが、微笑ましげにつぶやいた。
「ヘェ、マックスの家って案外円満なご家庭なのね。」
「ええ、そうなんですよ。でも、いいですねぇ。
私の家は母上も父上も忙しくて、マックスみたいに
家族みんなで、あんな风にしたことがあんまりないんです。」
「うん、あたしもね、ママは普段いるんだけど、
パパが帰り遅いから家族みんな一绪の时は灭多にないわ。」
すると、その言叶にタカオが眉を吊り上げる。
「なに言ってんだよ、お前ら!
二人とも父ちゃんも母ちゃんもいるのに、そんなこと言うなんて赘沢だぞ!
俺なんて母さん小さい顷に死んでいないし、
カイだって父ちゃんと离ればなれなんだからな!」
タカオの言叶にえっ、とヒロミが声を上げた。
「それって本当なの?カイ。」
「ああ、三年前にな。
今は、祖父と母の三人だが、母はろくな奴じゃない。」
するとカイの头に丸めたボール纸が飞んで直撃した。
投げたのはもちろんマックスである。
「カイ、ママのこと、悪く言うなんてボク、许せないネ!」
マックスは、ほっぺたをふくらませた。
カイはマックスに锐い眼差しを向ける。一触即発の雰囲気。
「まあまあ、カイ。
マックスが母亲を大事にしていることは、お前も承知の上だろう?
だから谢ってやったらどうだ?・・・な?」
横から入ったレイが悬命にカイを说得する。
レイのひたむきな态度にカイも渋々ながら头を下げた。
レイはほっ、と安堵の息をカイの横で漏らす。
だが、レイの安堵の表情が、しだいに忧いを帯びた表情になっていった。
(えっ・・・?)
慌てて目をこするマックス。
しかしレイの表情はいつもと同じ、快活な笑颜の表情だった。
さっきのは错覚だったのか?そう思えてしまうほどだった。
「さあ、それじゃあ、研究所に向かいましょう!」
ジュディ局长は嬉しそうに言った。
「ふーん、じゃあマックスはこっちで暮らしていたこともあるんだ。」
「うん!もちろん日本で家族で暮らしてたこともあるネ。」
バスの中で弾む楽しげな会话。
话题は家族のことだった。
话の轮の中には普段、会话に加わろうとしないカイさえも加わっている。
「それじゃあ、カイの颜のペイントはお父上と别れたときに・・・!?」
「ああ、・・・まあ、自分を変えたい、といった考えもあっての事だがな。」
「てことは、もし、カイが父ちゃんと别れていなかったら、
今と违って、もうちょっとかわいげのある性格になってたってわけだ。
俺は爱想のいいカイの方が良かったな。」
わざとらしくため息を吐いたタカオに、カイ以外のみんなが愉快そうに笑い出した。
「でもぉ、あたしは爱想の良いカイなんて想像できないな。
レイもそう思うでしょ?」
振り返りながらレイに话しかけるヒロミ。
しかし、レイは答えない。
ヒロミの声など闻こえていないように、窓の外の景色をぼんやりと眺めている。
「レイ!?」
「レイってば!」
三度目の呼びかけで、レイはやっと呼ばれていたのに気がついたように颜を上げた。
「えっ・・・?よ、呼んだか?」
「もう三回くらい呼びましたよ。どうかしたんですか、レイ?」
レイはその答えに苦笑いして言った。
「いや、何でもない。・・・少し、寝ぼけてたみたいだ。」
「あはははは、そういやレイ、飞行机ん中でもずっと寝てたもんな~。」
タカオの指摘に、レイもみんなと一绪になって笑い出す。
(なんか、违うネ・・・。)
マックスは心の中でつぶやいた。
さっき空港で见せた表情もそうだったが、
レイの笑颜はなんだか无理をしているように见えた。
少なくとも、疲れがたまっているとかそういう様子ではない。
そう言えば、レイは今も空港でも话の轮に入っていなかった。
レイの家族のこと、そのことが今までレイの口から语られたことは一度もない。
「ねぇ、レイ・・・。」
「ん?どうした、マックス?」
マックスは意を决して问いかけた。
「レイの、ママとパパって、どんなヒト?」
その言叶にレイが锐く反応する。
そしてその眼は动揺して揺れていた。
-キィィィィィ!
バスがちょうど研究所に到着し、停车した。
「さぁ、ついたわよ。荷物、忘れないようにね。」
ジュディのその一言で话は终わりとなった。
・・・・・しかし、最后までバスの中に残っていたレイが一人、
ため息を吐いたことに谁も気がつかなかった。
その晩、マックスはなかなか寝付けなかった。
侧で寝ているタカオのいびきがうるさいとか、
隣の部屋で寝ているヒロミの壁を蹴る音が気になるとか、そういった问题じゃない。
(レイ・・・、一体どうしちゃったネ・・・。)
いつも気丈で、强くて、贤くて、しっかりしていて、困ったときにはいつも助けてくれる。
マックスにとって兄のような存在である金・李。
彼が昼间、あんな悲しそうな表情をしたのを见たのは初めてだった。
そしてマックスが、彼に家族のことを闻いたときの目はとても悲しい目をしていた。
(何か、あったのかナ・・・?)
マックスは大きく首を振って迷いをうち消そうとした。
しかし、そんなことをしても思いは消えない。
気分転换にマックスはそっと部屋を抜け出した。
行く场所は决まっている。
研究所の屋上だ。
気分の优れないとき、一人でいたいような気分の时、マックスはよく屋上に行ったものだった。
そんなときはいつも决まってレイがマックスの侧にいて、マックスが落ち着くまで慰めてくれた。
(ダメダメ!いつもレイばっかりに頼っちゃダメね!)
マックスは头を振ると、重たいドアをゆっくりと开けた。
だが、屋上には先客がいた。
「れ、レイ・・・?」
「なんだ、マックス。お前も来たのか。」
そう言って微笑んだのはレイだった。
「なんでこんな所にいるネ!?」
「なんでって、ちょっと寝苦しくてな。夕凉みに来てみたんだ。」
レイはネオンを见下ろした。
その表情は普段と変わりない。
・・・でも、マックスは何となくレイをそのままにしておけなかった。
それに二人きりでいるのは、昼间の答えを闻く绝好のチャンスだった。
「レイ、・・・昼间の、続きなんだけど・・・。」
するとレイはびくっと体を引きつらせた。
「あのネ、ボク、なにもレイのコト・・・、」
「気を遣わなくていいよ、マックス。」
ふうっ、とため息を吐いたレイはマックスに座れよ、と身振りで示した。
マックスはその场に腰を下ろす。
「変だよな、今までに俺だけ家族のことをみんなに话したりしないなんて、
マックスが不思议に思っても仕方ないよな。
まあ、俺の家の问题もあるんだけど・・・。」
「レイの家?」
マックスは首を倾げた。
「俺の家、金家は村が出来たときからある古い家系なんだ。
それに初代族长も金家の者だった。
昔から武芸に优れた家系だったんだ。」
朗々と诗でも语るように话すレイ。
知识が豊富だと言うことが话し方にも表れている。
「でも、金家は俺の祖父の代に一度、势いが衰えた。
迹継ぎがみんな次々死んでいったから、
金家はなくなるんじゃないかって心配されたほどだ。でも・・・」
「でも・・・、どうなったノ?」
先が知りたくてレイを急かすマックス。
レイはゆっくりと口を开いた。
「母の命を代偿に、金家の嫡子、俺が生まれたんだ。」
マックスは绝句した。
レイはうつむいたまま続けた。
「父は母が命を赌して产んだ俺に李と名付けた。
昔から中国や日本では、男に女の名を付けると丈夫に育つと言われている。
父はその迷信にあやかって俺をそう名付けた。」
「じゃあ、レイのママは・・・もう、いないノ?」
レイはその言叶にうなずいた。
「母は、俺を产み落とすと同时に产が重くて亡くなった。
だから、俺は母の颜すら知らない。」
そっと夜空を眺めるレイ。
その目はどこか远くのものでも见るような眼差しだった。
「でも、レイのパパはレイのコト、かわいがってくれたんでショ!?
だってたった一人の息子なんだシ!」
「父が俺をかわいがる?本気でそう思っているのか?マックス。」
レイは笑みを浮かべた。
しかし、その笑みは自嘲的な笑みだった。
「金家が衰えているときに?マックス、大违いだ。
むしろ逆だ。父は母がいない分、俺を锻え上げた。
それこそやっと両足で立てるようになった顷から俺は父に武术を仕込まれ、
そして三つの时に老师のいる戦士の村に入れられた。」
普通、戦士の村に子供を入れるのは子供が5・6歳の时。
レイの场合は间违いなく、异例だったといえるだろう。
「・・・厳しい父亲だった。
村に行った后は便りもよこしてくれなかったし、会いにさえ来てくれなかった。」
レイの脳裏に父亲と过ごした日の事が、走马灯のようによみがえっていった。
「爱してくれないんじゃないか、そう思えて、・・・仕方なかった。」I