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【P站小说】[银高]春のあらしと暗の底

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暂时马克一下,有时间会翻译。
不过描写好多好麻烦-0-……
虽然泪点也不得不说要归功于描写吧。。


1楼2011-08-04 22:16回复
    【前编】春のあらし
    --------------------------------------------------------------------------------
    『死して埋もれど土には还らず夜中に墓から这い出して、わたしの喉笛を、食い千切りに来るといい。それでわたしも救われる』
    约5年振りに、
    戦场から戻ってみると、かつての风景は见る影も无く。
    丘の上には焼け落ちた御堂と、その上に覆い被さるよーにして枝叶を伸ばした桜の巨木が一本、ただ真っ青な空の下、真っ黒な影絵みたいに伫んでいるだけだった。
    青い空。
    白い云。
    足元にはつくしが生えてる。
    のどかな景色の中で、おそらく御堂と共に焼けてしまったのであろう、その干の上半分だけ炭化して黒焦げになっている桜の木の存在は、なんだか异様で、
    不吉だった。
    そんな春。
    あたたかな春。
    「なんだコレ?」
    って、その光景を目の当たりにして、最初に抱いた感想はそんなかんじでした。
    「意味がわからない」
    高杉は何処だろう?と、
    崩れ落ち、芯まで焼けてただの炭になってる木材を、両手で掴んで一本一本退かして瓦砾の山を掘り返して掘り返して掘り返してみたけどなんにも见つからない。
    よーやく発见した、地下へと続く、御堂の床下に掘られた深い深い穴仓への扉を开いて中まで降りてみたけど无駄だった。
    その空间はただガランとしていて、
    虚しく、
    中には谁も、居なかった。
    「ッかしーな?」
    なんて、ひとりで首を倾げてみてもなんにも始まらない。
    どーしよーもなく途方に暮れて、せめてなにか手挂かりはないかと谛め悪いかんじで地上に戻り、积み重なってる木材やら瓦の破片やらをガッチャンガッチャン引っ掻き回してひっくり返してみたけど状况は変わらなかった、一向に。
    その内だんだんと目が见え难くなってきて、遂には自分の足元も见えなくなって、瓦砾につまずいてよろけて転んで尻饼ついてハッとして辺りを见回すと、
    真っ暗だった。
    気付くととうに阳は暮れて、辺りは一面、ただの暗。
    自分の息が、すごく荒くなってる事に、よーやく気づいた。
    梦中で焼け迹を捜索していた俺は、いつの间にか汗まみれで、夜になってた事なんて知らなかった。
    暗暗の中、手探りで、来てすぐ桜の木の根元に置いたまま放置してた荷物の所まで戻って行って、
    风吕敷包みの中から常备してる携帯用のカンテラを取り出し、マッチで火を点けて、见ると、
    时刻は酉三つくらいだろうか?
    暗がりの中、桜の巨木と、无惨に焼け落ちた御堂の迹がぼんやりと、ただ薄気味悪く、弱々しい蝋烛の明かりに照らし出されているだけだった。
    暗に向かってカンテラを差し出す俺の手はもう血まみれで。
    ポタポタと、持ち手を握る指の先から血が垂れてはカンテラの小さなガラス窓を汚した。
    よく见たら何本か、指の爪が剥がれかけてて、触ると根元からグラグラしていて今にも取れちゃいそーでぁーぁと思った。
    考えてみれば军手もせずに、素手で土木系の作业してたんだから当然だと思う。
    痛みは既に无かった。
    手の平も指先も皮がめくれて破けて、出来たてのマメがその场で溃れて血が出てドロドロのグチャグチャの脓も混じってなんかもー目も当てられない酷い事になってる手首から下全体の感覚はもはや麻痹しててなんにも感じない。
    近くに流れる小川まで歩いて行って、川の中にザブンと腕まで浸して水で冷やすと、暂くして、よーやく感覚が戻ってきた。
    ズキンズキンと脳まで响く、痛みが。
    赤く肿れ上がった両手に溜まった热に、冷たい、雪解け水の、小川のせせらぎが心地良かった。
    ひんやりと。
    そのまま目を闭じて考える。
    


    2楼2011-08-04 22:21
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      2025-12-25 06:01:38
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      俺の高杉は、何処へ行ったんだろう?
      その后の数日间は、焼け落ちた御堂の迹に、ただ浮浪者さながら栖み着いた様にして过ごした。
      期间にすると一周间くらいか?
      ただなんもせずに、ぼーんやりしてた。
      昼间は近くの小川で小鱼钓ったり、近くの野原や山に、山菜や食べられる木の実采りに行ったりして。
      野鸟や兎も、时々捕れたりして。
      薪になりそーな枯れ枝や、着火材になりそーな木の叶なんかも集めて。
      夜は夜で焚き火をして、昼间采ったり捕ったりしてきた色々な获物を焼いたりなんだりして、モソモソと食って过ごした。
      野営や野宿には惯れてたから、特に困る事とかひとつも无かった。
      そんな生活を缲り返して、七日。
      その间、此処には谁も来なかったし、谁にも见られなかった。
      最初から、そーゆー场所を选んでこの御堂に决めたんだから、当然と言えば当然だ。
      ふと、つい数周间前まで日常だった戦场の光景すら忘れそうになっている自分に気づく。
      あの戦争が、この世の何処かでまだ続いている事なんて、信じられなくなるくらい、
      血生臭く、常に死と隣り合わせの紧张感の中、杀伐としていた戦场での生活とは打って変わって、
      この场所で过ごす穏やかな日々は毎日単调なまでの変化の无さで、のどかで。
      うららかで。
      平和だった。
      ただ、半分黒焦げになった桜の巨木の、もう半分、无事だった方はまだ元気に生きてるみたいで、空に向かって伸ばされた枝々の先端についた无数の蕾だけが徐々に、阳が当たるにつれ徐々に徐々に、膨らみ続けていた。
      见れば既にポツポツと花も开きかけてる。
      全体を见ればまだ、一分咲きにも満たないけれど。
      鸣呼。
      気がついてみればもう、空気もだいぶ暖かい。
      春が来たんだなあ、と、ぼんやりと思った。
      もう何日も、谁とも口を利いてないな。
      ただ漫然と缲り返す毎日を缓慢に、机械的なまでの単调さで、思考すら停止させてボケーッと过ごし続け、ふとすれば言叶も忘れそう。
      だけど别にいい。
      俺が话したい相手なんて、この世もう、たった一人しか居なくて―――
      その一人が此処に、居ないのだから。
      毎日毎日そんなんして过ごしている内に、此処での生活にも最早惯れきってしまい。
      数えてみると、戻ってからいつの间にか一ヶ月近くが経过していた。
      変わらない日々。
      暇な时间は、辛うじて焼け残ってた御堂の縁侧に、ただぼんやりと寝っ転がって过ごした。
      ひたすら无为に、怠惰にゴロゴロしていた。
      他にする事が无かったからだ。
      なにひとつ。
      高杉の居ないこの场所で、他に何をして过ごせばいいかわからなかった。
      俺は、あいつが居ないと、駄目なのに。
      「なぁ?」
      ッて、枕元の黒猫に向かって话し挂けてみる。
      猫は、ここ数日、度々この近辺で姿を见挂けるよーになった奴で、
      今も縁侧の板の间の上、丁度よく阳の当たる场所を见つけては、俺と一绪になってゴロゴロヌクヌク寝ている。
      一周间くらい前から御堂に姿を见せ始めたこの猫は、最初の内は木の阴とかからこっそりと、コッチの様子を伺いつつも、ただ远巻きに控え目にウロウロしているだけだったんだけど。
      どうにも腹を、空かせていたみたいで、
      或る日の夜、俺が焚き火の火で鱼焼いてたら、その匂いに诱われるよーにしてフラフラ近寄ってきた所を捕まえた。
      むんずと。
      猫は暴れもしなかった。
      しかしながら捕まえてみた所で猫なんか食う気も起こらず。
      どーしよーかと思ったけど、よく见たら、その黒猫が俺好みのとても可爱いらしい颜をしてたので、なんだか気に入ってしまい、
      食い残しの小鱼とかやってる内に、懐かれて、油断している间にそのまま栖み着かれてしまった。
      


      3楼2011-08-04 22:21
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        この御堂は、
        高杉と俺だけの、秘密の场所だったので、それ以外の他人を受け入れる事はたとえ猫の子一匹たりとも许せねえ、とか、大人気なく思ったりもしたけど。
        最初、远目に见た时から、その黒猫だけはなんだか特别な気がしていた。
        妙に懐かしいかんじがするとゆうか。
        爱しいとゆうか。
        この御堂の持つ雰囲気に、なんだかやたらと驯染んでた。
        まるで风景の一部みたいに。
        昔から栖んで居たかのように?
        黒猫には、
        左目が无かった。
        だからそもそもこの御堂の存在自体を、俺と高杉以外の第三者に教えた时点で俺は既に失败していたのだと、今更になって気づいてはいた。
        すべてはあの日、俺が召集令状握り缔めて、戦地に赴く前日に、失败は始まっていたのだと。
        「信用してたのに、ひでえよな」
        先生のこと。
        ッて、傍らで丸くなってる猫に向かって呟いてみても、猫は寝たまま、反応は无い。
        最近では、膝に乗ったり腹の上で眠ったりと、本当によく懐いてきた。
        春うららの暖かな日だまりの中。
        縁侧に寝っ転がって见上げると、空には一面満开の桜。
        云ひとつない青空を背景に见事に咲き夸ってる。
        あったかくって気持ちよくて、さっき焼いて食った鱼で腹は満腹だったし、脇の下には猫が居るし、俺はなんだか穏やかな気持ちで、そのままウトウト、眠ってしまったらしい。
        目が醒めると夜になってた。
        春と言えども、阳が落ちればまだ底冷えがする。
        体になんも挂けずに縁侧で寝こけてた俺は、夜になり、ブルッと寒さに身を震わせて目を醒ました。
        「ヘクシッ」って、クシャミして鼻水啜り上げてる俺を、猫が隣りの床から冷静なまなざしで见上げてくる。
        ぁ。
        まだ居たんだオマエ。
        って、思った。
        头上には、昼间と変わらず満开の桜。
        狂った様に咲き乱れてる。
        ぁぁだけど、同じ桜でも、昼と夜とではなんだってこーも趣が异なるんだろう。
        夜の、桜は、
        なんだってこーにも、
        不気味、
        なんだろう?
        なんて俺がぼんやり考えてたら、下から急に突然、
        「银时」
        って、
        呼ばれたからびっくりした。
        「ぇ?ナニ?」
        反射的にそー返して振り向くと、声がしたと思った筈の场所にはいつもの黒猫が居て、
        お行仪よく、両足揃えてチョコンと座ってた。
        颜だけは真っ直ぐ前方を向いたまま、黒猫は、俺の隣りの床の上から、横目で俺を见上げると、笑って、
        「怖がりめ」ッて、
        言った。
        「この、怖がりめ」ッてクスクスと笑う。
        それで俺が少し腹を立てて「なんだよ」ッて掴み挂かろうとすると、猫はヒラリと优雅にその身を躱し、そのままフワリと落下して、音も立てずに土の上に降りた。
        まるで体重自体无いかのような身のこなしだった。
        「なんだよテメー」
        だから、その后ろ姿に向かって叫んだ。
        大きな声で、
        「俺が夜桜とか怖くなったのは、元はと言えばテメーの所为じゃねーかこんちくしょー」
        すると猫は振り返り様に、また笑った。
        「テメーが俺に、桜の木の下には尸体が埋まってるとかなんとか、ホラーな话闻かせてくれた所为で」
        そう。
        その所为で、昔ッから俺は夜になると桜が怖い。
        ガキの顷から。
        「桜の花びらがうっすらピンク色してんのは、その根元に埋められた尸体の血ィ吸い上げて染まってるからだとか、なんとか」
        そんなメジャーな怪谈话を最初に俺に教えてくれたのも、お前だった。
        「高杉」
        そう、俺が呼ぶと、
        猫は肩を竦めて、もう一度だけクククと笑い、踵を返して歩いて行ってしまう。
        トトトッて、ちょっと进んで、桜の木の根元まで行って、立ち止まると、振り返り、
        


        4楼2011-08-04 22:21
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          「オメーの臆病は変わんねーなー」ッて、ゆった。
          黒猫はあくまで愉しそーだ。
          夜风に桜の花びらが舞っている。
          见上げると吸い込まれそうな桜吹雪の下、
          だけど、ッて、黒猫は続ける。
          「ぁー、だけど」
          降りしきる花びらで一面薄红色に染まった桜の木の根元から、
          俺に向かって、
          「埋まってるのが俺でも怖ぇか?」
          笑って、
          「银时」
          それだけ言うと、猫は最后に一声、ニーと鸣き、
          暗暗に溶けて消えた。
          迹にはただ深々と花びらが降り积もるだけ。
          まるで真冬の、雪景色みたいに。
          黒猫の消えて行ったその向こうの暗をただ呆然と眺めてた俺は、暂くして、よーやくハと我に返り、
          裸足のまま慌てて地面に降りると、さっき猫が立ち止まって俺に话し挂けた辺り、桜の木の根元まで、走って行って、しゃがみ込み、
          位置的にはたぶんこの辺りと、目星をつけて、
          素手のまま、払っても払っても后から后から降り积もる薄红色の花びらを、一心不乱に掻き分けながら、
          ザリザリと土を掘った。
          ザリザリ。
          ザクザク。
          戻ってきた初日にほぼ付け根の方まで剥がれて、最近になってよーやくくっ付き挂けてた爪の间にまた土が入ってきて痛かった。
          しかしそんな事には构わず土を掘る。
          ザリザリと。
          ザクザクと。
          掘り进める。
          深く、深く。
          深さが或る程度まで达すると、途中から石や木の根が邪魔してきて、なかなか进まなくなってイライラしたけど。
          それでも掘った。
          深く、もっと深く。
          暗い穴を。
          掘り进めて行く内に段々と、腕を伸ばしてもその穴の底面まで手が届かなくなってきて、仕方が无いのでそれ以降は体ごと穴の中に下り、尚も掘り続け、1M近くも潜った顷、よーやく指先になにやら柔らかいものが触れて、ホッとした。
          だから、そこから先は、ゆっくりと、优しく掘った。
          ソッと壊さないように。
          伤めないように。
          するとやがて真っ黒な土の中から真っ白な颜が现われて、
          「ああ、なんだ」
          てのひらで土を払ってやると、その表情は、こんな冷たい土の底で、まるで眠っていたかのように安らかだ。
          「なんだ、ここに居たのか」
          だから、その首から上だけ両手で持ち上げて、
          「高杉」
          声を挂けた。
          「やっと见つけた」
          するとその生首はパカと右目を开けて、
          俺を见て、
          笑った。
          訳もなかった。
          よくよく见れば、俺が両手で掲げたソレは真っ白なしゃれこうべで。
          白骨の割にはズシリと重たく感じたその头盖の中で、なにやら动く気配がしたかと思うと、
          左目の穴からヌルリと一匹の蛇が这い出してきて、
          俺を见て、二三度パチパチ瞬きしながら、可爱らしい仕草でチロチロと赤い舌を出し、
          そのままボトリと地面に落ちると、
          ニョロニョロと、蛇行しながら桜の木の根元に消えた。
          どうやら长い年月の间に、头盖骨は蛇の巣穴になっていたらしい。
          更に掘り返せば他の部位も出てきた。
          ぜんぶ抱えて穴から这い上がり、桜の木の根元に积み上げた、人ひとり分の白骨を前にしてうなだれる。
          ぁーぁ。
          「こんなんなっちゃった」
          言いながら涙がポトリと出た。
          だいたい予想はついてたから、いーけど。
          こーやって、目の前に见せつけられると、なんつーか、现実感が増して、やっぱへこむわ。
          「高杉」
          お前は、
          「死んでた」
          やっぱり。
          爱する人は骨に。
          大切だから闭じ込めたのに。
          【続】


          5楼2011-08-04 22:21
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            大概介绍一下内容【其实是马着怕自己忘……看的我好辛苦的orz……
            哦,今晚只有空看完了前编【春のあらし】。后编扫了一眼没来得及看。
            前编的故事就是五年战争之后的银时回到家乡发现了晋助已经不在人世的悲惨故事。【昂?这样就算完了?】
            中间有一只很灵异的黑色娘阔。。【不是单纯的梁祝化蝶晋助化猫的故事啊,这点真的很辛酸的。尤其是猫一直笑啊,又恐怖又伤感啊T T】
            好吧虽然说得比较嬉笑不过真的是个很惨的故事。被虐的哭都哭不出来了。。
            霓虹金的描写真的很要命啊!
            【なにひとつ。
            高杉の居ないこの场所で、他に何をして过ごせばいいかわからなかった。
            俺は、あいつが居ないと、駄目なのに。】
            之类的,虽然都是很简单的话,但是还是觉得实在是心疼地扛不住啊!
            


            6楼2011-08-04 22:40
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              【后编】暗の底
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              その御堂の床下には座敷牢があってずっと闭じ込められてた。
              期间にすると、约5年间くらい?
              太いカンヌキが顽丈な南京锭で固定されたこの畳敷き六畳の牢屋の中から、一歩も外に出ていない。
              出口はない。
              (牢の外部の天井に、地上と続く天窓のような穴が开いてはいるけどソレは上から縄梯子を下ろして降りて来る为のもので、入口ではあっても、少なくとも出口ではない。この空间の床からでは背伸びしてもジャンプしても指先さえ届かない)
              地下だから、当然窓もない。
              5年も笼ってたら肌の色が真っ白になってしまった。
              灭多に覆いを外さない姿见をたまに覗いてみれば、中にはいつも痩せて不健康そうな血色の自分が映っているばかりで。
              気持ち悪くなって、すぐまた覆いを下ろす。
              见るたび细くなるみたいだ、俺は。
              うっすらと、血管が浮き出た手首を返して见れば、腕も指も枯木みたく痩せ细り、今にも折れそうで。
              もう二度と、太刀など握れそうもない。
              だけど色が白くなるのだけは、银时が喜ぶので、俺も嬉しい気がしていた。
              自分では気味が悪いだけの、灯りに翳して见れば青味が差すほど白い俺の肌にいつも赤い痕を残して喜ぶ。
              全身に、郁血痕を散りばめて。
              后からソレを満足気な颜して眺めては、「やらしいよね」って目を细めて笑う。
              そんな银时が、
              俺は好きだった。
              水场もなければ风吕も厕もない、こんな不便な环境下でも、家财道具一式は银时が揃えてくれていたので生活に不自由は无かった。
              毎朝毎晩访ねて来ては、寝汗で湿った俺の背中を丁宁に拭いてくれる。
              夏は水で绞った手拭いで。
              冬はお汤で绞った手拭いで。
              やさしくいたわるように。
              俺と银时は幼驯染みで、寺子屋时代からずっと同じ先生の塾に通って育った。
              塾では常に优等生だった俺と、劣等生だった银时と、
              そんなふたりにも分け隔てなく接してくれた、先生と。
              ヅラとかなんかみんなが居て、幸せだった时代も今はもう远く想い出の遥か彼方で。
              此処に闭じ込められてからずっと、先生とももう、5年以上会ってない。
              银时が、俺を此処に连れて来たのは突然の事だったので、外では俺は、行方不明とゆう事になっているらしい。
              蒸発したまま5年も経てばもー、死んだ设定にされてても不思议はない。
              さらわれて、
              闭じ込められた。
              それからずっと、此処に居る。
              それだけ。
              5年间ひとりぼっちでしたが、5年间毎日欠かさず银时が来てくれたので、淋しくはありませんでした。
              てゆーかこんな、ロクに通风孔さえ无い密室に软禁状态で、万一银时に见舍てられたら、若しくは外で、银时の身に何か起きて、奴が来れなくなったら、俺はもはや水も食い物も无く、ただ死を待つしかない訳で。
              或いはそれ以前に酸欠で死ぬのかも知れない。
              その事を银时に话すと、奴は事も无げに笑って、応えた。
              「その时は、谛めて死んでくれ」
              俺の命がある限り、何があってもなんとしてでも雨が降ろうが枪が降ろうが必ず毎日这ってでもココに来るから。
              もしも俺が来なくなったら、
              その时は、
              死んだと思って、お前も谛めてくれ。
              等とのたまう银时は自分胜手な奴だ。
              だけど优しいところもある。
              いつも、地上に出れない俺の为に、外から色んなものを持って降りて来てくれた。
              本とか烟管の叶とか三味线の糸とか、欲しい物が有れば、言えばなんでも买って来てくれた。(それが奴の贫弱な経済力でどーにかなる范畴の物なら)
              春になり、花が咲くと、手折って俺に见せに来てくれるのが嬉しかった。
              


              7楼2011-08-04 22:40
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                てのひらの中に蝶を捕まえてきて、目の前で、放して见せてくれた事もある。
                草も木も无い、风も吹かない座敷牢の中、
                蝶は一日中、ヒラヒラと飞び続け、
                翌日の朝には床へ落ち、
                たった一晩で死んだけど。
                「ぁーぁ」
                夜になると、また银时が来る。
                「高杉」って俺の名を呼ぶ。
                いとしげに。
                时々は、冗谈めかして「晋ちゃん」って。
                ああもっと、名前を呼んで欲しかった。
                お前以外には谁にも会わない、谁も来ないこの场所で、长い年月、ひとりで、俺は、お前に呼んでもらわないと、自分の名前さえ忘れそう。
                今夜も银时は薄い布団の上で俺の体を散々もてあそんだ后、
                「じゃーまた、明日の朝」
                ガチャガチャと、牢屋の锭を闭め、ギシギシと縄梯子を升り、
                (バイバイ)
                天井の穴から颜を出して一二度俺に手を振ると、スルスルと梯子を回収して帰ってゆく。
                行ってしまう。
                别れを惜しんで立ち上がり、格子越しにずっと见ていた。
                俺と外界を遮断するこの格子は床から天井までを贯く太い木材が縦にも横にも坚固に组み合わさって出来ていて、叩いても蹴っても俺程度の力ではビクともしない。
                牢の出口を闭ざすカンヌキに挿された无骨な南京锭は锖びついて、かつては金色だった表面の涂装も剥げて触ると赤茶色に指が汚れた。
                嗅ぐと、鉄くさい。
                血の匂いがする。
                键穴に嵌まる键は、银时が持ってる。
                いつも。
                そんな厳重に键なんか挂けなくても、俺にはもーとっくに逃げる気なんて无くなってるッてこと、本当はわかっている癖に。
                それでも银时は、毎日念入りに键を挂ける。
                闭じ込めるように。
                隠すように。
                守るように。
                「病も戦も人も时间も、お前を连れ去れないように」
                祈るように。
                呟きながら。
                まるで病んだ様子でかたくなに俺を外に出すまいとする银时を见るたび俺は胸が痛んで目を背けたくなる。
                あの日からずっと、消したくても消えない罪悪感がまた込み上げてきて喉が诘まる。
                言いたくて、言えなかった言叶はたぶん「ごめんなさい」で。
                あいつには、悪い事をしてしまったと、いつも思ってたし。
                今でも思ってる。
                そんな银时が、もう此処には来れそうにないと泣きそーな颜をして言いに来たのはそれから间も无くの事だった。
                戦争が始まったので、徴兵されるのだと言う。
                いつもの様にギシギシと音立てて縄梯子を降りてきた、その手には、それが招集令状である事を示す真っ赤な封筒が握られていて。
                びっくりした。
                こんな、爆撃机も避けて通るよーな田舎の森の中に、もう何年も闭じ込められてる俺にとっては、今この国が直面しているらしい戦火の涡なんて何処吹く风とゆうか、まったくノータッチな出来事だったんですけど。
                この地下牢で俺と一绪に过ごす时间と、外の世界でふつーの村人やってる时间との二重生活送ってた银时にとって、ソレは避けては通れない道らしく。
                外界の戦は激しく、こんな人里离れた山间の、更に谷间の辺境の村の青年まで前线に駆り出される始末らしい。
                「逃げるにしたって、お前连れてじゃ无理だしなあ」
                と、悲しそーな颜をして言う。
                実际のところ、その顷の俺は元々患っていた労咳の病状がもーかなり末期の様相を呈する迄に进行していて、一日の内ほとんどの时间を起き上がれもせず床に伏せっている様な状态だった。
                そんな俺の、浮き出た锁骨を抚でながら、名残惜しそうに银时が呟く。
                「连れて逃げれたらいいのに」
                いつ帰って来れるかもわからない、てゆうか帰って来れるかもわからない、戦况次第によっては数年挂かるかも知れない、なんて言うので、俺はてっきり、银时は、俺を杀してから行く気なのかと思った。
                


                8楼2011-08-04 22:40
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                  2025-12-25 05:55:38
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                  だから、枕元の床に座って俺を见下ろす本人にそー讯いてみると、そんな事はしないと言う。
                  「必ず…いや、极力生き延びて、帰って来るから」
                  痩せこけた俺の頬を抚で、涙目で言う。
                  「それまで、待ってて」
                  俯いたまま。
                  そんな缒るような表情の银时を见上げながら、俺はもう涙も出ない。
                  帰って来るまで待てと言う、银时の、その真挚な瞳は、必ず生きて帰って来るとゆう、奴の本気の决意を物语ってはいたけれども。
                  そんなんゆわれても。
                  俺の方が待てねえよ。
                  きっと。
                  银时は、马鹿だから、
                  こんな弱り果てて死相浮かびまくりの俺の姿を毎日见ていてさえ、
                  まさか俺が、本当に死ぬ筈はないとでも、思っていたのだろうか?
                  だとしたらホント马鹿だあいつ。
                  马鹿。
                  大马鹿。
                  俺だって、患えば、ふつーに死ぬッつーの。
                  马鹿。
                  そうして银时は、俺の栖んでた村をも含めて、この日の本の国を守る立派な兵队さんとなり、何処か远くの知らない土地へと派兵されて、
                  戦争に行ってしまいました。
                  最后に会った时には陆军の军服を着ていた。
                  「键は、先生に预けておくから」
                  そー言い残して、いつものように、不必要なほど厳重に施锭して出て行く、その后ろ姿を、病の床から见送りながら、俺は、これから死地に向かう银时の事より、自分の事ばかり考えて、
                  腹を立ててた。
                  雨が降ろうと
                  枪が降ろうと
                  生きてる内は绝対に、俺の侧から离れないって、约束したのに。
                  「うそつきめ」
                  翌日からは、银时の言ってた通り、もはや自力では寝返りを打つ事さえままならない俺の看病には、先生が来てくれた。
                  およそ5年以上振りに、大好きな先生に会えた事それ自体は纯粋に嬉しかったんだけど。
                  外の世界で、案の定俺は、やっぱりとっくに死んだ事にされていたらしい。
                  夜中に一人で山にでも入って、脚でも滑らせて谷底にでも落ちて死んだんじゃないか的な事を言われていたらしかった。
                  それか、病を苦にして自杀でもしたんじゃないかと、嗫かれていたそうだ。
                  天井から、银时以外の人间が降りて来たのは初めての事だった。
                  ギシギシと縄梯子を降りて来た先生は、牢屋の中で寝たきりの俺を见るなり悲痛な颜をして、ガチャンと手早く锭を开け、駆け寄って来ると、再开の挨拶も早々に、そのまま俺を抱き起こし、いきなり外へと运び出そうとしてきたからびっくりした。
                  先生の腕の中で、出会い头にとつぜん姫抱っこされてドキドキしつつも、落ち着け俺と自分になんとか言い闻かせ、取り敢えずは、なんで此処から俺を出そうとするのか极力冷静を装って寻ねてみると、先生は、ギョッとした様な表情で、俺を见て、「当たり前でしょう」って、言った。
                  こんな、底冷えのする空気の悪い地下牢に病人を寝かせて置く事自体どうかしている、と、言われた。
                  そんなものなのだろうか?
                  一刻も早く、设备の整った病院に入院して、そこでちゃんとした治疗を受けるべきだと言う。
                  そんなものなのだろうか?
                  だけど、いくら先生にそー言われた所で、俺は、银时が帰って来るまで、この座敷からは一歩も外に出る気はなかったので。
                  出たくなかったし。
                  死ぬまで出るつもりもなかったので。
                  先生の必死の说得にも顽として応じず(ごめんなさい先生)、绝対嫌だ死んでも出ない无理矢理出したりしたら舌噛んで死ぬと强硬に突っ拨ねたところ(ごめんなさい先生)、丸一日挂かりで俺を说き伏せよーとしてくれていた先生も、遂に折れ、
                  「それじゃあ、これからは私が毎日、通いで看病しに来ますから」
                  そー言ってくれた。
                  たいへん申し訳なかった。
                  一度言い出したらテコでも曲げない先生の顽固さは相変わらずで、最初の内は、半ば强制的に俺を押さえつけ、场合によってでは気绝させてでもといったかんじの势いで外に连れ出そうとしてたんだけど。
                  


                  9楼2011-08-04 22:40
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                    「どうせもう长くはないと、自分でわかっているんです」
                    俺がそう言うと、まるで伤ついたような颜をして、振り返り、
                    「死ぬなら此処で死にたい」
                    俺を担いだまま梯子を升ろうとしていた手を止め、床に戻してくれた。
                    ごめんなさい、先生。
                    それからは、毎日毎晩朝夕二度、先生が见舞いに来てくれた。
                    银时に代わって。
                    著名な文学者であり、思想家でもある先生は兵役が免除されていて、この戦时下に於いてもまだ割と物资や时间の都合がつくそうで。
                    おかゆとか、作っては持ってきてくれた。
                    薬草入りの、体にいいやつを。
                    滋养がつくとかゆって(こんな死にかけの衰弱しきった末期患者に今さら滋养とかつけたって无駄だって事は先生も、…先生がいちばん、理解ってた筈なのに)、わざわざ家から、冷めないようにして、急いで运んで来てくれた。
                    それから薬とかも、きっと手に入り难いのに、日々懐に忍ばせて来てはこまめに俺に饮ませてくれて、俺はそれが毎日申し訳なくて、情けなくて仕方なかった。
                    银时のみならず、ぃゃ银时ならともかく、わざわざ先生にまで毎日贵重なお时间を割いてまでお越し戴いて、非常に面目ない。
                    外の世界が戦で大変な时なら尚更、こんな死に损ない、放って置けばいいものを。
                    先生は嫌な颜ひとつせず、毎日来ては、この地下牢にけっこー长い时间居てくれて、かいがいしいくらい亲切に、最早ただ辛うじて息をしているだけの、生きた生ゴミと変わらない状态の俺の世话を焼いてくれる。
                    そんな优しい先生と、いつも一绪に居れるのは嬉しかったけど。
                    これ以上、迷惑を挂けるのは心苦しくて。
                    つらくて。
                    俺はもう、
                    早く死にたかった。
                    そんな俺の思いが天に通じたんだかどーだか知らないけど、银时が居なくなった途端、先生の手厚い(むしろ银时よりも手厚く、致密で的确な)看护の甲斐も无く、俺の病状は一気に悪化して。
                    それから一个月と保たず、
                    或る日の晩に、
                    (先生が、外は雨だと言っていた)
                    俺は、
                    (そう言う先生の肩も濡れてた)
                    先生に见守られる中、
                    (だから淋しくはなくて、俺は幸せだった)
                    血を大量に吐いて、
                    (苦しかった)
                    呼吸困难を起こして、
                    (苦しかった)
                    あっけなく死んでしまいました。
                    もう今にも呼吸が途绝える寸前の酸欠で混浊した意识の中、最期に聴いたのは、危笃状态から死ぬまでずっと离さずに俺の手を握っていてくれた先生の声。
                    涙を零しながらおっしゃっていた言叶を、断片的に覚えている。
                    「あなたたちは」
                    「间违っています」
                    「こんな」
                    いまわのきわでもう声も出ず、言い訳ひとつ出来なかったけれど。
                    本当は、弁明したかった。
                    「违う」って。
                    违う。
                    本当は、5年前のあの时、俺が银时に言ったんだ。
                    「连れて、逃げて」と。
                    鸣呼。
                    こんな过疎の村の、それでも旧家に产まれ育った俺は幼少の顷から体が悪くて。
                    当时から、医者にももう、长くは生きないだろうと言われていて。
                    二十歳は越えられないと言われていたのが悔しくて、それでも顽张って、寺子屋に通い、剣术も覚えて、十と六の诞生日を迎えた、あの年の冬、
                    产まれて初めて、血を吐いた。
                    俺がもう长くはないとわかると、家族は焦ったようにして远く离れた村の豪农や名家の娘との縁谈话を持ち出してきた。
                    家族的には、6人兄弟のいちばん末っ子だった俺が死ぬなら死ぬでその前に、形だけでも结婚して他の金持ちとの繋がりを作る事で少しでも家の财政を润してから死んで欲しいと、そーゆー訳らしかった。
                    で、结婚した后、近い将来、いよいよ死にそーになった时には俺は产まれ育った村から远く离れた都会の大病院に送られる事まで既に决定されていて。
                    


                    10楼2011-08-04 22:40
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                      ひとりぼっちで、或いは、好きでもない嫁さんに付き添われて、死ぬまで其処のサナトリウムでの疗养生活を强いられる事が余仪なくされていた。
                      その事を、幼い顷から恳意にしていた银时に泣きながら话すと、あいつもそんな俺を可哀相だと言ってくれて。
                      だから俺は、银时に頼んだんだ。
                      あの日、
                      あの冬の最中、
                      うっすらと雪の积もった寺子屋の庭の片隅に在った、狭くて暗い、纳戸の中で。
                      コッソリと、人目を忍んで、当时はまだ、悪戯の様に、无邪気に、睦み合った后、
                      ふたりして、乱れた衣服を直そうともせず、埃っぽい、土の地面の上で縺れ合ったまま、
                      卑怯にも俺は、泣いて頼んだ。
                      泣きながら、あいつのまだ汗ばんだ胸に、颜を埋めて、
                      言った。
                      「どうか、さらって」
                      つれて、にげて、と。
                      すべての运命から。
                      まるで昨日の事の様に、鲜明に脳裏に浮かぶ当时の记忆も、指折り数えてみればもう5年も以前の事なんだから改めて思い返すとなつかしい。
                      死にながらぼんやりと、そんな昔の事を考えていた。
                      血まみれだった断末魔の苦しみも、死んでしまえばなんて事は无い、喉元を通り过ぎたかのようで。
                      もしかしたら俺は今、产まれて初めて、体の何処も痛くも苦しくもない、ゆわゆる健康で爽快とゆう素晴らしい心身の状态を味わえているのかも知れない。
                      それが最早、死后って事だけが残念だ。
                      鸣呼。
                      死んでから、开きっ放しの目で见上げると、先生が、まだあたたかいであろう俺のなきがらを胸に抱いたままシクシクとお泣きになっていて、悲しい気持ちになってしまう。
                      「泣かないで、先生」
                      ッて言いたかったけど。
                      死んでしまっては、もう声も出ない。
                      それから暂くして、先生は、ソッとそのいつもの上品な所作で、涙をご自分のお袖でお拭いになり、泣きやまれると、改めて俺の死に颜をご覧になって、渐く気づかれたのか、哀れまれるような目をなさって、まだ先程の涙も乾かないままの濡れた手の指先で、パッチリと、死んでからずっと、天井を凝视したまま开きっ放しになっていた、俺の睑の上を、静かに押さえる様にして、
                      瞳を闭ざしてくれた。
                      优しく。
                      ソッとそのいつもの上品な所作で。
                      睑を闭じられた筈なのに一向に暗くならない视界で见続けていると、先生は、死んで自重を支えられないグンニャリとした俺の体を一旦布団に戻し、再び、今度は绮丽に脚を揃えて横たえ、胸の上で両手を组ませてくれた。
                      それから一晩中、付きっきりでお通夜をしてくれている様だったから、死んだ后になってまでお手数お挂けしてしまい、まったく生前に轮を挂けて申し訳ないなあと、思った。
                      どっからかお线香とか持ち出してきて、枕元で焚き、数珠を爪缲り念仏まで唱えてくれた。
                      (坊主でもないのに、先生は本当になんでも出来るんだなあ)
                      そんなこんなで夜も明けた顷、よーやく一旦居なくなり、だけどまた夜には戻って来ると、颜に白い布を挂けられたまま丸一日动く事も出来ずにただジッとしていた(当たり前だけど)俺の体を抱き起こし、ズルズルと牢屋の中から引き摺り出して、もはや死后硬直でガチガチになっていた骸の両脇に縄を挂け、そのままヨイショと天井の穴から引っ张り上げて、
                      そうして遂に、
                      俺を脱出させてくれた。
                      あの栖み惯れた地下牢から。
                      たいそう久々に目にする地上の光景は、5年前の夜、银时に连れられて初めて此処へ来た时、空を拝めるのもこれで最后と思って目に焼きつけた记忆の中の风景と、大して変わり映えもしていなかった。
                      初めて此処に来た时も、冬だった。
                      外から见ればあの地下牢を守り隠すかの様にして上に建つ、古ぼけた御堂の脇に、冬枯れした桜の巨木が深々と根を下ろしていた。
                      暗夜の中に在って暗よりも更に暗い影絵のように黒々と、耸え立つ。
                      见ると、その木の根元に、穴が在った。
                      どうやら昼间の内に先生が、あらかじめ用意してくれていたらしい。
                      ポッカリと、奈落に向けて口を开く、それは俺の墓穴ですね?先生。
                      先生は、深い深い、掘った本人の身长をも越える深さの大きな穴の底まで俺を担いで降りてくれて、
                      (伟大な文人である先生に今日は力仕事ばかりさせしまい、本当に申し訳なく思った)
                      地面の上に、俺の体を寝かせると、
                      (地下から出されてまたすぐ别の地下に戻された)
                      一度だけ、名残惜しそうに俺の頬を抚で、
                      (そのあたたかな感触を今でも覚えている)
                      それからすぐに立ち上がり、踵を返すと、自分だけ穴から这い出して、
                      (仰向けに寝かされ遥か彼方の天を仰ぐ、俺は置き去りのまま)
                      穴の渊から覗き込む様にして、俺を见下ろし、
                      (深い穴の底から见上げると、先生のお颜の周囲には、丸く切り取られた夜空を背景に黒々と浮かび上がる桜の木の枝と、その更に高みには霞み挂かった月が见えていた。目を凝らして见ると、満月だった)
                      最后に声を、挂けてくれた。
                      「春になればあたたかな、花の布団で眠れるだろう」
                      だから、
                      「それまでおやすみ。
                      この木の下で」
                      そう言って、
                      俺の体に土を挂けた。
                      そうして何も见えなくなった。
                      土は黒くて、冷たく、重い。
                      桜の木の下。
                      【终】


                      11楼2011-08-04 22:40
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