
【前编】春のあらし
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『死して埋もれど土には还らず夜中に墓から这い出して、わたしの喉笛を、食い千切りに来るといい。それでわたしも救われる』
约5年振りに、
戦场から戻ってみると、かつての风景は见る影も无く。
丘の上には焼け落ちた御堂と、その上に覆い被さるよーにして枝叶を伸ばした桜の巨木が一本、ただ真っ青な空の下、真っ黒な影絵みたいに伫んでいるだけだった。
青い空。
白い云。
足元にはつくしが生えてる。
のどかな景色の中で、おそらく御堂と共に焼けてしまったのであろう、その干の上半分だけ炭化して黒焦げになっている桜の木の存在は、なんだか异様で、
不吉だった。
そんな春。
あたたかな春。
「なんだコレ?」
って、その光景を目の当たりにして、最初に抱いた感想はそんなかんじでした。
「意味がわからない」
高杉は何処だろう?と、
崩れ落ち、芯まで焼けてただの炭になってる木材を、両手で掴んで一本一本退かして瓦砾の山を掘り返して掘り返して掘り返してみたけどなんにも见つからない。
よーやく発见した、地下へと続く、御堂の床下に掘られた深い深い穴仓への扉を开いて中まで降りてみたけど无駄だった。
その空间はただガランとしていて、
虚しく、
中には谁も、居なかった。
「ッかしーな?」
なんて、ひとりで首を倾げてみてもなんにも始まらない。
どーしよーもなく途方に暮れて、せめてなにか手挂かりはないかと谛め悪いかんじで地上に戻り、积み重なってる木材やら瓦の破片やらをガッチャンガッチャン引っ掻き回してひっくり返してみたけど状况は変わらなかった、一向に。
その内だんだんと目が见え难くなってきて、遂には自分の足元も见えなくなって、瓦砾につまずいてよろけて転んで尻饼ついてハッとして辺りを见回すと、
真っ暗だった。
気付くととうに阳は暮れて、辺りは一面、ただの暗。
自分の息が、すごく荒くなってる事に、よーやく気づいた。
梦中で焼け迹を捜索していた俺は、いつの间にか汗まみれで、夜になってた事なんて知らなかった。
暗暗の中、手探りで、来てすぐ桜の木の根元に置いたまま放置してた荷物の所まで戻って行って、
风吕敷包みの中から常备してる携帯用のカンテラを取り出し、マッチで火を点けて、见ると、
时刻は酉三つくらいだろうか?
暗がりの中、桜の巨木と、无惨に焼け落ちた御堂の迹がぼんやりと、ただ薄気味悪く、弱々しい蝋烛の明かりに照らし出されているだけだった。
暗に向かってカンテラを差し出す俺の手はもう血まみれで。
ポタポタと、持ち手を握る指の先から血が垂れてはカンテラの小さなガラス窓を汚した。
よく见たら何本か、指の爪が剥がれかけてて、触ると根元からグラグラしていて今にも取れちゃいそーでぁーぁと思った。
考えてみれば军手もせずに、素手で土木系の作业してたんだから当然だと思う。
痛みは既に无かった。
手の平も指先も皮がめくれて破けて、出来たてのマメがその场で溃れて血が出てドロドロのグチャグチャの脓も混じってなんかもー目も当てられない酷い事になってる手首から下全体の感覚はもはや麻痹しててなんにも感じない。
近くに流れる小川まで歩いて行って、川の中にザブンと腕まで浸して水で冷やすと、暂くして、よーやく感覚が戻ってきた。
ズキンズキンと脳まで响く、痛みが。
赤く肿れ上がった両手に溜まった热に、冷たい、雪解け水の、小川のせせらぎが心地良かった。
ひんやりと。
そのまま目を闭じて考える。
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『死して埋もれど土には还らず夜中に墓から这い出して、わたしの喉笛を、食い千切りに来るといい。それでわたしも救われる』
约5年振りに、
戦场から戻ってみると、かつての风景は见る影も无く。
丘の上には焼け落ちた御堂と、その上に覆い被さるよーにして枝叶を伸ばした桜の巨木が一本、ただ真っ青な空の下、真っ黒な影絵みたいに伫んでいるだけだった。
青い空。
白い云。
足元にはつくしが生えてる。
のどかな景色の中で、おそらく御堂と共に焼けてしまったのであろう、その干の上半分だけ炭化して黒焦げになっている桜の木の存在は、なんだか异様で、
不吉だった。
そんな春。
あたたかな春。
「なんだコレ?」
って、その光景を目の当たりにして、最初に抱いた感想はそんなかんじでした。
「意味がわからない」
高杉は何処だろう?と、
崩れ落ち、芯まで焼けてただの炭になってる木材を、両手で掴んで一本一本退かして瓦砾の山を掘り返して掘り返して掘り返してみたけどなんにも见つからない。
よーやく発见した、地下へと続く、御堂の床下に掘られた深い深い穴仓への扉を开いて中まで降りてみたけど无駄だった。
その空间はただガランとしていて、
虚しく、
中には谁も、居なかった。
「ッかしーな?」
なんて、ひとりで首を倾げてみてもなんにも始まらない。
どーしよーもなく途方に暮れて、せめてなにか手挂かりはないかと谛め悪いかんじで地上に戻り、积み重なってる木材やら瓦の破片やらをガッチャンガッチャン引っ掻き回してひっくり返してみたけど状况は変わらなかった、一向に。
その内だんだんと目が见え难くなってきて、遂には自分の足元も见えなくなって、瓦砾につまずいてよろけて転んで尻饼ついてハッとして辺りを见回すと、
真っ暗だった。
気付くととうに阳は暮れて、辺りは一面、ただの暗。
自分の息が、すごく荒くなってる事に、よーやく気づいた。
梦中で焼け迹を捜索していた俺は、いつの间にか汗まみれで、夜になってた事なんて知らなかった。
暗暗の中、手探りで、来てすぐ桜の木の根元に置いたまま放置してた荷物の所まで戻って行って、
风吕敷包みの中から常备してる携帯用のカンテラを取り出し、マッチで火を点けて、见ると、
时刻は酉三つくらいだろうか?
暗がりの中、桜の巨木と、无惨に焼け落ちた御堂の迹がぼんやりと、ただ薄気味悪く、弱々しい蝋烛の明かりに照らし出されているだけだった。
暗に向かってカンテラを差し出す俺の手はもう血まみれで。
ポタポタと、持ち手を握る指の先から血が垂れてはカンテラの小さなガラス窓を汚した。
よく见たら何本か、指の爪が剥がれかけてて、触ると根元からグラグラしていて今にも取れちゃいそーでぁーぁと思った。
考えてみれば军手もせずに、素手で土木系の作业してたんだから当然だと思う。
痛みは既に无かった。
手の平も指先も皮がめくれて破けて、出来たてのマメがその场で溃れて血が出てドロドロのグチャグチャの脓も混じってなんかもー目も当てられない酷い事になってる手首から下全体の感覚はもはや麻痹しててなんにも感じない。
近くに流れる小川まで歩いて行って、川の中にザブンと腕まで浸して水で冷やすと、暂くして、よーやく感覚が戻ってきた。
ズキンズキンと脳まで响く、痛みが。
赤く肿れ上がった両手に溜まった热に、冷たい、雪解け水の、小川のせせらぎが心地良かった。
ひんやりと。
そのまま目を闭じて考える。











